種別 論文
主題 塩素イオンがアルカリシリカ反応に及ぼす影響
副題
筆頭著者 二村誠二(大阪工業大学工学部)
連名者1 福島正人(大阪工業大学工学部)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
12
1
先頭ページ 789
末尾ページ 794
年度 1990
要旨 まえがき
アルカリシリカ反応によるモルタルバーの膨張量は、モルタル中に添加されたり、外部環境から供給されたりするアルカリ化合物の種類によって大きく異なることが知られている。しかし、これらの結果は必ずしも一致するものではなく、反応性骨材の種類や試験方法によっても異なるようである。アルカリシリカ反応には「化学反応」過程と「吸水膨張」過程が存在するが、この化学反応過程において生成されるアルカリシリカゲルの「質的要因」と「量的要因」がアルカリ化合物の種類によって大きな影響を受けるためと思われる。阪神地区において、アルカリシリカ反応による劣化コンクリート構造物の多くは塩化ナトリウムを含有する海砂を使用しているが、この海砂からのアルカリ添加がコンクリートの膨張を大きく促進させている。この海砂による膨張促進効果はアルカリ量の増分以上に大きいこと、さらにコンクリート内部鉄筋の腐食が相対的に激しいことから、コンクリート細孔溶液中の塩素イオンの存在がこのような現象に大きな影響を及ぼしているものと思われる。本研究は、塩化ナトリウムを添加したモルタル細孔溶液中の化学組成を分析することにより、塩素イオンがアルカリシリカ反応にどのような影響を及ぼすかについて検討したものである。
むすび
塩素イオンがアルカリシリカ反応に及ぼす影響について、モルタル細孔溶液を抽出し、その化学組成を分析することによって検討した結果は以下のようである。(1)モルタルバーの膨張量はNaOH添加のものよりもNaCl添加のものの方が最終膨張量は大きい。NaClの添加により、アルカリシリカ反応はややゆるやかに進行するので、生成されるアルカリシリカゲルの剛性はかえって高くなるため最終膨張量が大きくなるものと思われる。(2)モルタルバーの圧縮強度と膨張量の間には明確な関係は認められず、アルカリ化合物の種類による影響が大きい。なお、動弾性係数は膨張量が0.05%を越えるあたりから急激な低下を示すので、継時変化を考慮すれば、アルカリシリカ反応による劣化度の指標として利用できるものと思われる。(3)モルタル細孔溶液の化学組成を分析した結果、生成されるアルカリシリカゲルは、主としてNa2O-SiO2ゲルおよびK2O-SiO2ゲルで構成されていることが認められた。(4)NaClを添加したセメントペーストから抽出した細孔溶液の化学組成を分析した結果、次に示すような極めて興味深い事実が認められた。すなわち、1)NaClが添加されるとセメントペースト細孔溶液中のSおよびOHイオン濃度は低下する。2)材令6時間を過ぎる頃からSイオン濃度は急激に低下すると共にClイオンの固定化も進み、それらに対応してOHイオン濃度は上昇する。3)Clイオンの固定化は材令3日でほぼ終了するようである。しかし、NaイオンおよびKイオンは固定化されない。4)シグマ(Si4++Ca2++Na++K+)とシグマ(S2-+OH-+Cl-)とはほぼバランスしている。(5)細孔溶液中のS、Clイオン濃度が低下するとOHイオン濃度が上昇するのは式(1)、式(3)に示すような複塩の中でのイオン置換反応によるものと推論される。(6)NaClを添加したモルタル細孔溶液の粉末X線回折法による鉱物組成の分析によれば、NaCl、KCl、CaCO3、Na2CO3で構成されるようである。
PDFファイル名 012-01-1135.pdf


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