種別 論文
主題 鉄筋コンクリート梁中のひびわれ進行
副題
筆頭著者 寺島善宏(東京都立大学大学院)
連名者1 平尾哲也(東京都立大学大学院)
連名者2 長嶋文雄(東京都立大学)
連名者3 山崎淳(東京都立大学)
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 783
末尾ページ 788
年度 1990
要旨 はじめに
1-1鉄筋コンクリート梁中の進行性のひびわれ 鉄筋コンクリート梁中の進行性のひびわれの顕著な例は、せん断補強のない梁において、せん断の影響によって進行する斜めひびわれがよく知られている。その時の強度の計算としては、設計に用いる目的に対して、土木学会コンクリート標準示方書の場合などでは、広範な実験結果の分析から抽出された影響要因の回帰式で与え、案用上の条件に対してよい精度が得られているが、材料力学的理論にもとづく定量的説明は確立されていない。1.2斜めひびわれ形成後のせん断補強のない梁の破壊時の抵抗機構 斜めひびわれとその両端への延長線で梁を分断する作用と見なし、それに対する抵抗は、その分断線上で起こる局地的抵抗要因すなわち下記各項の和とする説が知られている。(1)斜めひびわれ先端より上の部分のコンクリート(圧縮領域)(2)斜めひびわれの下端における主鉄筋のダウェルアクション(3)斜めひびわれ面での骨材の噛み合い いずれもが定量化が確立されておらず、この考え方は設計式には用いられるには至っていない。プレストレスがある場合には、(1)の低抗の増加で考慮される。1.3せん断に対する設計式で想定された耐荷機構と疑問点 国内国外とも設計基準において、梁の耐力Vを、せん断補強鉄筋の耐力Vcと、せん断補強鉄筋を取り除いた梁の耐力Vcの和と考える方法が用いられている。すなわち、V:Vc+Vs・・・・・・・・・・・・・(1)この式の意味するところは、せん断補強鉄筋で補強された梁においても、せん断補強鉄筋を取り除いた梁と同じ耐力が発揮されるとする考え方であって、材料力学的理論が不明である。就中、せん断補強鉄筋の量が少ない場合には、実際の耐力は、(1)式で算出されるより相当高くなる場合が知られている。すなわち、せん断補強鉄筋で補強された梁においては、(1)式を適用するならば、せん断補強の度合によって、Vcが変化すると考えるほうがより現象に即している場合があるように思われる。1.4せん断に対する補強方法 せん断補強鉄筋としてのスターラップ等によるもの、プレストレスによるもの、鋼繊維補強によるものがある。状況に応じてより望ましい性能を得るためプレストレスを従来の水準より減ずる工法(PRC)の建設も行われ始めている。実務設計においても、強度の統一的解釈が望まれる。 1.5本研究での着眼点 本研究では、1.2項で引用した説におけるような複数の抵抗要因が同時に発生する場合の和と見なすのではなく、連鎖的に進行するのではないかとの着眼に立ち、その進行の開始の基準として斜めひびわれの先端部の挙動に着目する。現象の解明とともに、実際構造物において、プレストレス、複合材料、合成構造など補強方法の多様化が進む構造の強度評価の材料力学的理論構成の基礎の一環を目指す。
まとめ
本研究は、斜めひびわれ進行の開始基準としてひびわれ先端部の挙動に着目し、ひびわれ進行に関与する各種要因を取り上げ、各要因がひびわれ先端部に及ぼす影響を調べた。図4にもとづき、ひびわれ進行に関して今回の手法の結果を以下に示す。Iシリーズは、ひびわれによる付着剥離長さが鉄筋直径の5倍を想定した主鉄筋剛性であり、2シリーズはひびわれ先端の挙動に及ぼすこの要因の感度を把握するためにIシリーズの剛性を更に1/10にしたものである。プレストレスは、平均プレストレス、20kg/cm2、下端応力、60kg/cm2、となるように主鉄筋線上、梁端部に外力として表現した。スターラップはその量を、Vs=Vc/2、およびその4倍のVs:2Yc、となるような2種類を想定している。ひびわれ部分の鋼繊維コンクリートは、等方性物質としてモデル化しており、体積混入率は0.6%程度を想定している。鋼繊維の抜出しを全く考慮していない場合と、考慮して弾性係数を1/5倍した場合の解析を行った。(1)斜めひびわれ進行の傾向は、斜めひびわれの下端を繋ぐ主鉄筋の剛性の低下で顕著に増大する。(2)基本梁は、Iシリーズの条件ではひびわれは進展しないが、主鉄筋の剛性が低下する2シリーズでは、進行基準を40%超える。横軸に近いことから、ひびわれの開きが支配的である。(3)スターラップを加えることにより、進行の可能性は基本梁より減少しており、スターラップにより、コンクリート部分の抵抗を増すことを示すと考えられる。(4)スターラップを4倍に増量した効果は、Iシリーズの場合はさほど現れていないが、2シリーズでは開きを抑える効果が示されている。(5)プレストレスを加えることによって、ひびわれ進行を抑える効果は、スターラップの場合と同等以上である。(6)鋼繊維を体積混入率0.6%加えた場合の効果は、Esfを2、100kg/cm2とした場合は、ひびわれの進行を抑える著しい効果が現れている。Esfを420kg/cm2とした場合は、その効果はスターラップの場合とほぼ同等であった。今回の解析では、鋼繊維の周辺コンクリートからの抜出しを、弾性係数を1/5倍に減少させて表現したが、この点については更に検討する必要があると思われる。(7)前項(1)の挙動は、橋脚の中間部などの構造物で、モーメントの減少に応じて主鉄筋を減少させる場合、曲げとせん断に対して十分余力を持たせなければならないとする設計の規定の一つの説明になると思われる。
PDFファイル名 012-01-2132.pdf


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