種別 招待報告
主題 合成コンクリートスラブの耐久性
副題
筆頭著者 小森清司(長崎大学)
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キーワード
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先頭ページ 7
末尾ページ 16
年度 1990
要旨 はじめに
昔からコンクリートは耐久性に優れた建築材料であると考えられてきた。ところが近年になってコンクリートの劣化が激しくなり、いま、その耐久性が問われようとしている。それももとはといえば、初めからコンクリート自体に耐久性があるときめてかかっていたところに問題があるのだが、設計の段階で耐久性に対する気配りをしなかったことや、建物の使用期間中に定期的な検査や保全に努めなかったことが耐用年数をより短いものにしてしまった事実は見逃せない。しかし、近年におけるコンクリート材料の品質の低下もさることながら、建物を取り巻く外的環境条件の悪化が益々ひどくなってきている。とりわけ建物の床スラブは厚さが薄いだけに、その影響を厳しくうけ、常時荷重の下でさえひびわれや過大たわみをおこすものが続出し社会問題となっている。特に物流倉庫ではフォークリフトの使用が急増し、高頻度の繰り返し荷重をうける床スラブの損傷がひどく苦情が絶えないと聞いている。このような事態を解消するため、鉄筋コンクリート構造計算規準の大幅な見直しが行われ、床スラブ厚の増大による剛性の確保によってひびわれや過大たわみ防止対策がこうじられてきたが、耐久性がどれほど確保されたかについてはまだ明解な答を得るまでには至っていない。一方、近年の建設ブームによる労働力の不足が深刻化し工期の短縮、仮枠工事の合理化と省力化、熟練者の不足解消、労務費の節減などをねらって種々の合成コンクリートスラブが市場に出回っている。しかし、実用化されてからの日が浅く、それらの性状を十分に把握するにはまだ時間が必要であり、とりわけ耐久性に関する情報の取得は長期間の地道な観測が必要なだけにかなりむづかしいようだ。とはいえ諸般の状況からみて、合成コンクリートスラブの需要は今後益々高まることが予想され、早晩耐久性が問題化するだろう。それにそなえて、出来るだけ多くの情報を蒐集することが必要となってきている。本報告はその手始めとして、著者が実施した実験の中から合成コンクリートスラブの耐久性に焦点をしぼり、鉛直荷重による長期間載荷実験と300万回に及ぶ多数回繰り返し載荷による疲労実験を選んで、鉄筋コンクリートスラブとの比較も行いながら情報を提供する。もとより、実験に供した合成スラブは種類も、絶対数も極端に少なく、情報としては偏りがあって、とても総合的な判断用の資料とはなり得ないことや、実験での結果が単一荷重の多数回繰り返し実験であって、得られた結果が実在スラブの損傷状況とは異なっていることも承知の上である。しかしながら現場調査や現場実験による適切な情報が得難い状況のもとでは耐力を対象とした短期的な単調載荷実験の情報より少しは利用できる情報となりうると思っている。数としては少ない情報だが合成コンクリートスラブの設計に少しでも役に立てば幸いである。なお鉄筋コンクリート全般の耐久性に関する情報についてはここではふれないので、巻末の文献を参照してほしい。
おわりに
この報告は合成コンクリートスラブの耐久性を考察するための問題提起であって、その全容を明かにしようとしたものではない。したがって対象とした床スラブも少なく2種類に限定したが、いずれも通常の鉄筋コンクリート床スラブと同等かそれ以上の十分な耐久性を保有していることがわかった。将来、接合部の構法や施工法にもっと新しい工夫が導入されれば、性能はさらに向上すると思われる。これをきっかけに、合成コンクリートスラブの耐久性に関する幅広い研究が進んでその全容が明らかにされ、利用度の高い床スラブとしてさらに発展することを期待したい。
PDFファイル名 012-04-0002.pdf


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