種別 論文
主題 繰り返し曲げを受けるRC単純梁の累積消費エネルギー量の算定
副題
筆頭著者 魚本健人(東京大学)
連名者1 矢島哲司(芝浦工業大学)
連名者2 本郷和徳(芝浦工業大学大学院)
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 919
末尾ページ 924
年度 1992
要旨 はじめに
大地震等において、鉄筋コンクリート(以下、RCと略す)構造物が塑性変形を繰り返し受けた場合、被災後のその構造物の損傷程度および余力をより適切に評価する必要があると考えられる。筆者等は前報において、RC梁の累積された損傷・劣化の程度は累積消費エネルギー量と密接な関係があることを実験によって以下のように明らかにした。図−1、図−2は、前報の試験結果である。載荷方法はいずれも変位制御で動的(sin波形、載荷速度;0.1〜0.4Hz)に行なった。また、静的一方向載荷によって引張鉄筋が降伏して部材の剛性が変化した降伏変位δy(8mm、荷重;3.51t)を基に、5種類の同一変位による正負交番繰り返し載荷を破壊まで行なった。1サイクル当たりの消費エネルギー量は、測定した荷重および部材中央の変位計(2個)より求めた1サイクルの荷重(P)〜変位(δ)曲線を20次関数に近似させ、ループに囲まれた面積(△W)を計算して求めた。なお、図−1は1サイクル当たりの消費エネルギー量と繰り返し回数との関係を示したものである。図中の数字は破壊時までの繰り返し回数(N)である。また、破壊回数は、通常、復元力が最大荷重の80%以下に低下した時点か、あるいは降伏変位における荷重以下に低下した時点を破壊とするのが一般的であるが、前報の実験においては荷重が0付近まで大きく低下するか、または鉄筋が切断した時点を破壊とした。載荷変位の大きい±4δy、±5δyの場合は、載荷回数の増加にともない消費エネルギー量は減少したが±1δy〜±3δyにおいては、繰り返し回数の増加にもかかわらず破壊時までほぼ一定の値を示した。図−2は消費エネルギー量を破壊時まで加算した累積消費エネルギー量(Σ△W)と繰り返し回数との関係を示したものである。図に示されるように、載荷変位が±1δy〜±5δyと異なっているにもかかわらずほぼ同一の値(3.3×106kg・cm)を示した。一般にRC部材は、断面性能、載荷条件等が異なれば破壊形態が異なり、変形性能やその挙動が複雑になり、塑性域での挙動を的確に捉えることが難しいと考えられる。しかし、前報の繰り返し載荷された試験体の破壊形態は、±5δyの試験体を除きいずれも鉄筋の破断であった。このような破壊となったのは、試験体の腹鉄筋比(0.97%)が比較的大きく、この拘束によってコンクリートの塑性変形性能が改善され、大変形の繰り返しにもかかわらずコンクリートは圧壊せず、繰り返し回数の増加とともに主筋が部材の曲げ耐力を支配したためと考えられる。このような破壊形態において、いずれもほぼ同じ総消費エネルギー量に到達した時点で破壊していることから、この値は部材が消費し得る最大消費エネルギー量(W0)を示しているものと推定される。この値が求まれば、例えば1回の地震等による累積消費エネルギー量が求まればこれが何回生じた場合に破壊するかを求めることが出来ると考えられる。そこで本文は、実験によって求められた破壊回数および最大消費エネルギー量を簡単な履歴モデルと材料学の視点から破壊エネルギーを用いて算定した。なお、本文では前報で報告した試験体(単純梁)を解析の対象とした。
結論
限られた条件下ではあるが、本研究において得られた結論は以下の通りである。1)簡単な履歴モデルと鉄筋の静的ひずみエネルギーを用いて破壊回数と最大消費エネルギー量を算定したが、このような方法でもほぼ妥当な値が示され、破壊回数および最大消費エネルギー量の推定の可能性が示されたと考えられる。ただし、2)実験値の最大消費エネルギー量が各変位ともほぼ一定値を示したのに対し、破壊回数および消費エネルギー量を個々に算定して求めた最大消費エネルギー量の解析値は同一の値にはならず、今後は実験値との整合性等について検討する必要があると考えられる。
PDFファイル名 014-01-2159.pdf


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