種別 論文
主題 濃度の異なるNa2SO4溶液に浸漬したモルタル試験体の物理的特性
副題
筆頭著者 広永道彦(電力中央研究所)
連名者1 遠藤孝夫(電力中央研究所)
連名者2 佐々木肇(間組)
連名者3 谷口公一(間組)
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 679
末尾ページ 684
年度 1993
要旨 はじめに
従来、酸・塩類による化学的劣化を受け、その耐久性が問題となるのは、主に温泉場および薬品工場付近という、割りと特殊な環境に曝されたコンクリート構造物であった。ところが、近年、コンクリート構造物は海洋・地下等、幅広い分野で利用されており、特に、地下空間を利用した地下発電所のように、地下水位下に建設されるコンクリート構造物にとっては、地下水に含有される酸・塩類による化学的劣化は長期的に見ると、その構造物の機能および維持・管理に影響を及ぼすことが容易に予想される。そのため、筆者らはコンクリート構造物の長期的な耐久性に影響を及ぼす酸・塩類の中から特に、硫酸ナトリウムに対する耐久性を検討することとした。コンクリートおよびモルタル試験体を用いた硫酸ナトリウムによる化学的劣化の耐久性評価に対する研究はあまり見受けられず、2、3の研究者によって検討されているのみである。しかも、いずれの研究も、濃度を変えた硫酸ナトリウム溶液静水中に供試体を浸潰し、その長さ変化、重量変化、相対動弾性係数および圧縮強度等を測定し、その劣化性状の検討に止まっている。保守・補修が可能な、あるいは供用期間が50年程度のコンクリート構造物を対象とした検討では、その環境条件の下での劣化性状を把握することで、十分その目的を果たすことができたと考えられる。しかし、筆者らが検討対象として想定したコンクリート構造物は、地下水位下の地中に建設され保守・補修が困難で、しかもその供用期間が約100年〜300年と非常に長期に亘って耐久性が要求されるものである。そのため、筆者らは硫酸ナトリウムによるコンクリートの化学的劣化速度を評価できる式を実験に基づき提案する研究の一環として、濃度の異なる硫酸ナトリウム溶液中(0%、5%、10%)ヘモルタル試験体を浸潰し、その長さ変化、重量変化、相対動弾性係数等により物理的な変化を測定・分析することとした。本報告は、長さ変化、重量変化等の測定データに基づき、硫酸ナトリウム溶液に1年間浸漬したモルタル試験体の劣化性状とその結果に基づいて、モルタル試験体の硫酸ナトリウムの化学的劣化に対する劣化性状とその原因に関しての考察を取りまとめたものである。
まとめ
硫酸ナトリウム溶液の化学的劣化速度を定量的に評価する研究の一環として、濃度の異なる(5%、10%)硫酸ナトリウム溶液にモルタル試験体を12ケ月浸潰させ、その劣化性状とその原因に関する検討を実験に基づき行った。その結果を纏めると次の通りである。1)劣化性状について:12ケ月の浸潰期間を通して、重量変化率および相対動弾性係数(PC、PV)はほとんど変化はみられなかった。長さ変化に増大、曲げ強度比および圧縮強度比に低下が見られたのは、浸潰材令約6ケ月目であり、モルタル試験体にも微細なひびわれが確認できた。また試験値が示す挙動は、5%、10%とも同じ傾向であるが、その程度は10%溶液の方が大きいことが確認された。2)測定項目の挙動の原因について:長さ変化、曲げ強度比および圧縮強度比は浸潰材令6ケ月で低下する傾向が見られたのは、エトリンガイトの生成が原因と思われる。また重量変化率が浸潰期間通じてほとんど変化しなかったのは、表面剥離が見られなかったためと考えられる。相対動弾性係数(PC、PV)は長さ変化から微細なひびわれの発生があると判断されたにも係わらず長さ変化、曲げ・圧縮強度比に増大および低下が認められた浸潰材令6ケ月に変化が見られなかったのは、エトリンガイトの結晶がひびわれを充填したためと考えられる。そのため、劣化の指標としては長さ変化、曲げ強度比および圧縮強度比が有効と判断された。3)化学的劣化による劣化の指標について:劣化の指標として選定した長さ変化と曲げ強度比および圧縮強度比との相関関係から、耐久性の損失を判断する上では、長さ変化と圧縮強度比との間に相関性は認められたため、今後この両者の挙動を中心に化学的劣化に対する指標としての適性をつめる予定である。
PDFファイル名 015-01-1113.pdf


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