種別 論文
主題 非線形ロッド要素を用いたコンクリートはりの曲げ強度寸法効果解析
副題
筆頭著者 二羽淳一郎(名古屋大学)
連名者1  
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
15
2
先頭ページ 75
末尾ページ 80
年度 1993
要旨 はじめに
コンクリートの破壊力学に関する研究が各所で精力的に進められてきている。コンクリートの破壊力学は、無筋コンクリートはりの曲げ破壊、せん断補強されていないはりの斜め引張破壊、アンカーボルトの引抜き破壊等、基本的にコンクリートのひびわれが構造全体の破壊に直結するような破壊形態を解析的にシミュレートする際に極めて有効であると考えられる。これらの破壊形態では、単位面積当たりの破壊強度、いわゆる公称強度が部材の寸法とともに低減していくことが実験的に明かとなっている。この寸法効果は、部材に発生する応力とコンクリートの引張強度を単純に比較する、いわゆる強度規準では、決して説明できない現象である。そして、コンクリート構造強度の寸法効果を解析的に評価していく手法として、コンクリートの引張軟化挙動やコンクリートの破壊エネルギーを考慮した破壊力学的なアプローチが非常に有望視されているのである。破壊力学に基づくコンクリートのひびわれ進展の解析方法には各種のものがある。この内のひとつが、Hillerborgにより提唱された「仮想ひびわれモデル」である。これは、マイクロクラックの集合体であるコンクリートのひびわれを一つの離散的なひびわれにモデル化するものである。この方法に関する具体的な計算の手順は、例えばJClの破壊力学研究委員会の委員会報告書に詳しく説明されている。すなわち、コンクリート部材内に、あらかじめこの離散的なひびわれ位置を設定しておく。ひびわれ位置には、節点を2つ設けておき、等価節点力がコンクリートの引張強度に対応する値を超えた場合には、節点を切り離す。以後、あらかじめ実験から定めておいたひびわれ幅とコンクリートの引張軟化応力の関係を切り離された節点間に与えることにより、解析を進めていく。節点間では、通常の応力-ひずみ関係に代わって、応力-変位(ひびわれ幅)関係が使用される点が、大きな特徴である。内田、六郷らは、本手法により無筋コンクリートはりや切欠きはりの曲げ解析を行い、有用な知見を提示している、この他のひびわれ進展の解析方法として、Bazantらが提唱した「ひびわれ帯モデル」がある。ひびわれ進展規準に応力規準を用いると、有限要素解析におけるメッシュサイズに、発生する応力が依存することから、客観的な結果が得られないとして、有限要素解析にエネルギー規準を組み込んでいる。ひびわれ帯モデルでは、ひびわれを離散的に捉えず、ひびわれ帯内に微細なひびわれが一様に分布すると仮定している。この二つの解析方法は、ひびわれを離散的に提えるか、あるいはある幅内で一様に分布すると仮定するかが異なるだけであり、コンクリートの引張軟化挙動およびコンクリートの破壊エネルギーの取扱いに関しては同様である。本研究では、このうち、ひびわれを離散的に提える「仮想ひびわれモデル」を用いることとした。これは、現実の破壊進行領域の状態をかなり簡易にモデル化したものであるが、概念的には非常に明快である。そしてその際に、仮想ひびわれ位置の両節点間にコンクリートの非線形挙動、すなわちコンクリートの引張軟化挙動とコンクリートの破壊エネルギーを代表する、非線形ロッド要素を配置することとした。これにより、コンクリートの非線形挙動を通常の応力-ひずみ関係で表示することができ、増分解析が可能となる。参考文献に示された解析方法は、基本的にはひびわれ進展位置を人カデータとした割線解析であり、また部材内に複数のひびわれを設定することが困難である。しかし、本手法によれば、複数のひびわれを仮定することも可能であり、例えば曲げひびわれとせん断ひびわれが共存する場合にも拡張可能である。
結論
曲げ強度の寸法効果を数値的に評価するために、コンクリートの破壊特性を組み込んだロッド要素を用いて有限要素解析を行った。使用したロッド要素の妥当性を切欠きはりの実験データにより検証した後、曲げ強度の寸法効果に関するパラメトリックスタディーを行った。検討の結果、寸法効果をはりの寸法のみで評価するのは不十分であることが確認された。内田らが提案するようにパラメータを増加させていく方が当然精度は向上すると思われる。また、その裏付けもエネルギー的な考察に求めることができる。ただし、実務上は、実験により破壊エネルギーを求めることが困難な場合も多いと思われる。したがって、より一般的で簡便な指標として、例えばコンクリートの圧縮強度を破壊エネルギーの代替指標として選び、これを含めた形で、寸法効果を評価していくことも一つの方策ではないかと思われる。
PDFファイル名 015-01-2012.pdf


検索結果へ戻る】 【検索画面へ戻る