種別 論文
主題 既存れんが壁付鉄筋コンクリート造骨組の水平耐力実験
副題
筆頭著者 坂口昇(清水建設研究所)
連名者1 藤崎忠志(清水建設研究所)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
3
先頭ページ 485
末尾ページ 488
年度 1981
要旨 1.はじめに
 鉄筋コンクリート造の柱・はり骨組の壁面をれんが積みとする構造法の建物が、大正・昭和初期に盛んに建てられた。明治以来我国に於ける西洋建築の代表として、構造様式の主流を占めていたれんが造は、大正12年の関東大震災で多くの被害を出し、その耐震的な脆さが指摘された。かわって、鉄筋コンクリート造の耐震性が高く評価されるようになり、以後、れんが造建物が徐々に姿を消すことになる。しかし、鉄筋コンクリート造についても、「コンクリート及び鉄筋コンクリート標準仕様書」が建築学会から出されたのが昭和4年で、同じく「鉄筋コンクリート構造計算規準」が昭和8年になってから出されるなど、ようやく構造主体として一本だちしはじめたばかりで、言わば揺らん期にあった。したがって、この時期にはまだ「れんが壁を補強する」役割で鉄筋コンクリート造骨組が使われることも多かったようである。このような大正・昭和初期のれんが壁を持つ鉄筋コンクリート造骨組の建物に、耐震補強を施して、文化財として永く保存し再利用を計る試みが近年全国各地で行われるようになった。その場合、まず耐震診断が行われるが、診断を行う上で必要なれんが壁の耐力や破壊性状に関して不明な点が多いため、やむなく便宜的に、れんが壁を無視して、鉄筋コンクリート骨組だけで評価するといったこともあるようだ。合理的な診断を行うためには、この分野に於いて、もっと多くの実験データを集収することが望まれる。本実験の目的は、竣工後約50年を経過した実際の建物に関する耐力実験を通じて、れんが壁付鉄筋コンクリート造骨組の地震時の挙動や耐力を解明し、耐震診断のための一つの指針を求めることにある。
6.まとめ
 れんが壁付鉄筋コンクリート骨組に関する今回の実験から、耐秦診断の資料として以下のような知見を得た。(1)れんが壁と鉄筋コンクリート骨組ははぼ一体となって挙動するため、れんが壁のせん断破壊が周囲の骨組のせん断破壊を誘発することがある。したがって、れんが壁が付くことによって骨組白身の変形能力も低下する場合がある。れんが壁がせん断破壊するときの変形量は、部材角で1/1000rad.以下であり、いわゆる「極ぜい性柱1」」のそれより小さい。なお、れんが壁と柱の間のつなぎ鉄筋が架溝の一体牲に寄与していることも考えられる。(2)れんが壁付架構の剛性は、5.37×104ton/rad.であった。解析によると、れんが壁の初期ヤング係数は40ton/cm2であるが、破壊時には10ton/cm2まで低下している。(3)最大耐力の83%はれんが壁が負担していると考えられる。れんが壁の破壊は目地モルタルに沿って起こっており、終局平均せん断応力度は3.32kg/cm2であった。これは建築学会「組積造」の短期許容せん断応力度2.25kg/cm2を上回っている。
PDFファイル名 003-01-0122.pdf


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