種別 論文
主題 既存RC建物の常時微動計測に基づく動的構造特性
副題
筆頭著者 手越義昭(広島工業大学工学部)
連名者1 佐藤立美(広島工業大学工学部)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
4
先頭ページ 377
末尾ページ 380
年度 1982
要旨 1 序論
 建築物の耐震性能の良否は、本来建築物の保有性能と破壊形式とともに、建築物に作用する地震外力との相関に依り決定されるものであるが、地震外力そのものの不確定要素は、建築物の保有性能に関する不確定要素に比して十分多いと考えられる。従って、建築物の耐震性能の実状を把握するためには、まず、建築物の保有性能の現況調査を必要とする。本報は、既存建築物の耐震診断等の静的構造特性を基にして、常時微動計測による振動性状との関連を調べ論じたものである。
6 結論
 本論で取り扱った広島工業大学5号館のように独立した建築物の場合には、常時微動計測によっても、はっきりした1次の卓越周期が存在し、かつ、それらの解析結果は、静的構造解析で得られる剛性と質量より求めた1次固有周期とかなりよく一致する。5号館の場合は、実測結果と計算結果とは、長辺方向・短辺方向共に、0.05秒程度の差異が生じているが、これは、計算値の固有周期の場合の剪断剛性の評価にむしろ問題があると考えられ、逆に、実測結果を正値とすれば、逆算により、腰壁の影響や、耐震壁の弾性剛性の評価に関する解析理論の検証を可能にするであろうことを示唆している。建築物が独立でなく、近接する建物等と渡り廊下等で剛に連結されている場合には、連結部材の水平剛性の正当な評価なしには、構造計算で与えられる建物の鉛直部材のみの剪断剛性から、当該建物の振動性状を予測することは、多くの疑問がある。例えば図−2に示す如く広島工業大学本館横階段塔の建物の場合、この階段塔は、東側3・4・5Fで、北側2・3・4Fでそれぞれ近接する建物と渡り廊下で連結されている。この階段塔の常時微動の計測結果によると、東西方向の場合、2Fでの卓超周期が0.34秒であるのに対し、3F以上ではいづれも0.29秒付近で卓越している。近接した2棟の東西方向の常時微動計測結果が、いづれもほぼ0.32秒であることや、近接した一棟は6階建のほぼ純ラーメン構造であり、構造計算上の固有周期は0.57秒(2)であることを考えれば、これら3棟は、渡り廊下により一体となった振動性状を示していると見るのが妥当である。このことは、各々の建物を独立棟として解析し、渡り席下等の影響を無視して振動性状を予測し、耐震性能の評価を行うことは、必ずしも妥当な評価方法と言えない事を結論的に物語っている。実存する多くの鉄筋コンクリート造建築物においては、同様な問題を含む例が多く、コア階段室・エキスパンション等を有する建築物については、静的構造評価を含め、その耐震評価に関しては、今後重要な検討課題としていく所存である。広島工業大学新2号館は、設計時点ですでに増築予定が有り、現状のままであれば平均的耐震性能を有している。しかし、同建物はほぼ純ラーメンに近く、有効な耐震部材は少ない。従って、新耐震設計法に従えば予定通りの増築を行うことにより耐震性能は劣化する。以上の条件を踏まえた上で今回は上部を鉄骨造として、一層のみの増築が行われた。この増築後の振動性状は、実測の結果によると、振動性状に大きな変化は見られず、従って耐震性能の大きな変化はないことを示唆している。
PDFファイル名 004-01-0095.pdf


検索結果へ戻る】 【検索画面へ戻る