種別 論文
主題 経年コンクリートのシュミットハンマーによる推定強度とコア強度との関係
副題
筆頭著者 俣野善治(日本建築総合試験所)
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キーワード
5
先頭ページ 93
末尾ページ 96
年度 1983
要旨 まえがき
コンクリート強度の非破壊試験法の一種であるシュミットハンマーを用いる反発硬度法は、推定誤差が大きいにもかかわらず、テストハンマーが軽便で測定法も簡単であることから、今なお構造体コンクリートの圧縮強度推定に用いられる機会が多い。また、その推定誤差を小さくするために、この反発硬度と超音波伝播速度とを併用する複合法が近年脚光を浴びてきており、シュミットハンマーを用いる反発硬度の測定は、構造体コンクリートの各種非破壊試験法の中で、以前にも増して重要になつつつある.
既存鉄筋コンクリート(RC)造建物の棟造体コンクリー卜が、気中で長期間乾燥状態に置かれると、表層部が中性化し、これがシュミットハンマーによる反発硬度に影響を及ぼすことは既に知られている.これに対して、A)表層部コンクリートを5〜10mmの深さまで削り取って研磨し、その表面で反発硬度を測定することによって、中性化の影響を取り除く方法(例えばASTM C 805など)と、B)コンクリートを削り取ることなく、単に軽く研磨しただけのコンクリート表面において測定した反発硬度を、中性化の影響のない場合の強度推定式に代入して求めた推定強度に、補正係数をかけて補正強度を求める方法とが提案され、実施されてきた。A)の方法は、現場で適用する際、構造体を損傷させることになるので、非破壊試験の主旨に背くこともあって、わが国の建築の分野においては、直接コアーで較正する場合を除いて、一般に補正係数を用いるB)の方法が採用されている。
この方法で用いる補正係数としては、従来一般に表−1に掲げる値が用いられてきたが、わが国の建築構造物に適用できる補正係数の研究は少い。
本報は、大阪市とその周辺における既存RC造建物12棟の診断+W6のために行なわれた材令8〜55年のコンクリートの調査データの中から、シュミットハンマーによるコンクリートの反発硬度測定値と、その測定位違又はそのごく近傍から切り出された円柱コアによるコンクリートの圧縮試験結果を抽出して示したものでめる。さらに、同じ測定位置の反発硬度とコア強度との関係並びに反発硬度から日本材料学会式によって求めた推定強度とコア強度との関係を検討することにより、表層がほとんど中性化していない経年コンクリートについては、測定された反発硬度から日本材料学会式によって圧縮強度を推定することができ、表面から約10mm以上中性化している経年コンクリートについては、上記のように日本材料学会式によって算出した推定強度に補正係数(およそ0.6)をかけることにより推定できることを示す。
結論
コアの圧縮強度が構造体コンクリートの強度を表わすものであると仮定すれば、今回の調査の範囲内て次のような結論が導かれる。
1)構造体コンクリートの圧縮強度σBは、日本材料学会の式から推定した強度F=-184+13.0ROの約0.3倍〜1.0倍の範囲内に大きくばらついて分布しており、σB=α(-184+13.0RO)と表わすことができる(αは補正係数)。
2)この補正係数αは、材令8年以上のコンクリートでは、8年以降の時間経過の影響はほとんど受けず、中性化深さの影響を受ける。臨界中性化深さは約10mmと考えられる(注)
3)コンクリー卜の中性化深さが10mm未満の場合には、高材令のコンクリートであってもαは1・0に近くなる。
4)コンクリートの中性化深さが、10mm以上の場合には、材令はαの値にほとんど影響せす、αの値は概ね0.4〜0.8の範囲内で、平均値が約0.6となる。従って、3000日以上の材令の気乾コンクリートに対して従来使われてきた補正係数0・63は妥当な値であったと言える。
(注)N型およびNR型シュミットハンマーのプランジャーの先端は、半径25mmの球面の一部となっていて、使用時にはこの先端をコンクリート表面に当てて衝撃圧力を作用させるのであるが、衝撃の後コンクリート表面には直径5〜10mmのプランジャー痕が残る。プランジャーと同じ形状・寸法の圧力子を用いてコンクリート表面に局部圧縮力を静的に加えたGaedeらの実験2)では、コンクリート表面から上記圧痕の直径に等しい深さの位置では、コンクリートのひずみも変形もはぼ0となった。このことから、シュミットハンマーの反発度にはコンクリート表面から5〜10mmまでの表層部コンクリートの性質のみが影響を及ほすと考えられる。
PDFファイル名 005-01-0024.pdf


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