種別 | 論文 |
主題 | 養生温度条件とコンクリートの強度発現 |
副題 | |
筆頭著者 | 大井孝和(愛知工業大学) |
連名者1 | 森野奎二(愛知工業大学) |
連名者2 | 内藤幸雄(愛知工業大学) |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 1 |
号 | 0 |
先頭ページ | 5 |
末尾ページ | 8 |
年度 | 1979 |
要旨 | 1.序 JASS5に定められているような「気温によるコンクリート配合強度の補正値T」について、もう少し詳しく調べてみたいと考えたのが、この実験を始める発端であった。 コンクリートの強度発現に及ぼす養生温度の影響に関しては、古くより多くの研究調査があり、その成果が既に「積算温度方式」のような簡潔な形態にまとめられて、各国のコンクリート配合設計や施工の指針に用いられている。しかしながら、配合と養生の条件を設定しつつ、コンクリート強度発現の機構を考え、また既存の理論の意味を探ろうとすれば、参考にしうる実験結果などの資料を充分に見出すことは、それほど容易ではない。このことは、養生温度条件に関する実験が思ったほど簡単でないことを示すものであろう。 そこで筆者らは、比較的簡単で実行容易な方法により、実際的な配合のコンクリートについて広範囲な養生温度条件を設定できる実験方法の構成を試みた。本報告はその初めのものであるから、まだ用いた実験方法に対する評価の段階にとどまるものであるが、今後次第に実験データを蓄積して行きたいものと考えている。 5.実験結果に対する考察 本実験で得られたコンクリートの圧縮強度Fc、靜ヤング係数Esecおよび引張強度Ftについて、積算温度Mとの関係をグラフにプロットすると、それぞれ第1、2および3図のようになった。 これらのグラフから、ほぼ次のような事柄を読み取ることができる。まず、 (1)圧縮強度Fcは積算温度Mの増加につれて増大し、強度発現の過程は積算温度に依存しつつ進行するが、グラフ上で養生毎に若干異なる線となって表されるように、この過程は、養生温度が高いと、積算温度方式で評価されたよりもなお一層速く、また養生温度が低いとなお一層緩やかに進行することがわかる。したがって、積算温度方式をより広い温度範囲に適用しようとすれば、養生温度に関係する補正係数αを考慮する必要があると考えられる。この補正係数αの性質を調べることは、セメントの水和とコンクリート強度発現の関係を調べる作業に何らかの示唆を与えることになろう。なお、セメントの水和が事実上停止する温度とされる-10℃は、本実験結果に対してもよく適合するようであり、積算温度の原点を-10℃とすることに関しては、何ら問題点は見出されない。 (2)積算温度の増加につれて増大した圧縮強度は、第1図のような片対数のグラフで見ても、ある強度に達したとき、ひとつの屈曲点を形成し、それ以後の強度増大はきわめて緩やかなものとなる。この屈曲点は養生温度が高いほど低い強度に表れ、俗な言葉でいえば、高温養生した場合は最終の強度が低くなるという傾向を示す。この屈曲点に達したあと、他の温度条件に変えた場合の強度増大について、実験結果はやや微妙であるが、養生水が残存している限り、再び強度増大が起ると読み取るほうが不自然でないように思われる。 (3)以上のような強度発現の過程に対するセメント種類の影響についてみれば、過程の進行に要する積算温度が最も小さいのは早強ポルトランドセメントであり、他のセメントより屈曲点の強度も高い。中庸熱ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントよりも強度発現のために大きな積算温度を要するが、屈曲点になる強度は普通ポルトランドとほぼ同じであることがわかる。 なお、靜ヤング係数Esecおよび引張強度Ftの増大と積算温度Mの関係についても、圧縮強度の場合と同様、積算温度に依存する過程を考えることができ、更にその過程は圧縮強度の過程より若干先行しつつ進行するように思われるが、紙数の都合で、ここではそれらに対する考察を割愛したい。 |
PDFファイル名 | 001-01-0002.pdf |