種別 論文
主題 コンクリートの非破壊試験に関する研究
副題 動的方法によるコンクリートの内部品質の評価
筆頭著者 野崎喜嗣(武蔵工業大学)
連名者1  
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
1
0
先頭ページ 17
末尾ページ 20
年度 1979
要旨 1.はじめに
 コンクリートの非破壊試験法としての超音波伝播速度法は、手軽さ及び品質推定の精度の面で他の方法に比して有利であり、国内、国外を問わず多くの研究報告が見られるが、実施構造物を対象にしようとすると、コンクリート部材の内部条件(鉄筋等埋入物、空隙量、含水分、キレツ)の影響に関しては必ずしも適切なレスポンスを示さない事がある。これは相対するコンクリート面に設置した端子間を伝播した最初の音波によって内部品質を判定するという測定のアルゴリズムに起因するもので、この方法では終始つきまとう問題である。
 然しながら、実用上は、これら内部条件の変化に対し測定値がどの様な応答をするのか、その限界は、及び測定値の補正が出来るとすればどうするのか、といった測定上の及びデータ解析上の諸点を明確にする事が極めて重要な事項である。その為にはコンクリートをモルタル、粗骨材、空隙(或いは水隙)、鉄筋といった多相の複合材と考え、音波の伝播径路を把える事が望ましいが、その性質上、決定論的に解析する事は困難が多く、アプローチとしては考えられる種々の径路を伝播するのに要する時間を計算上求め、実測値及びオシロスコープ上の受信波形の状態から比較分析し、近似するといった方法に頼らざるを得ない。
 又、他方で、超音波伝播速度(以下縦波速度)はその性質上コンクリートの動的ヤング率には極めて密接な関連があるが、塑性的性質は殆んどパラメータとして関連してこない故に、例えば圧縮強さ等との関連には避けられない誤差が含まれる事になる。その為にはコンクリートに与えた振動の減衰定数を含めて分析する事が望ましいが、現在の市販の試験機では対象が標準試験体に限定される故に躯体構造物への適用に当っての極めて基礎的な事項について殆んど明らかにされていない。
 本報告はこれら諸問題を背景として実施した幾つかの実験室実験の結果を紹介し、非破壊試験法としての動的方法の適用の際の諸要因の効果を明確化しようとするもので、実験内容は既に何度かに亘って日本建築学会へ報告したものに、更に新たに行った実験の結果を含めてとりまとめたものである。
4.まとめ
 以上の諸実験及びその結果の検討から明らかになった事柄及び今後の課題は以下である。
(1)コンクリート中の縦波の伝播状態は、媒質をモルタル、粗骨材及びその両者の界面の3要因から大よその説明が可能である。関連実験を更に推し進めれば圧縮強度だけでなくもう少し広義な品質推定が高精度で行える可能性もあるが、その場合に、使用骨材の石質、粒径毎に補正係数を準備する方向での検討が必要である。又、モルタル中の空隙や含水分等の要因効果の検討も併せて行う必要がある。
(2)コンクリート内部のクラックも縦波速度には少なからぬ影響を及ぼす。(1)の問題とも関連するが、モルタル中のクラックよりも粗骨材界面のクラックの影響の方がより大であるが、これはクラックの方向性が縦波速度に及ぼす影響の他に、より剛性の大きい粗骨材がモルタルと切り離される事も理由の1つと考えられる。これらの実験結果から、少なくとも圧縮強度よりは縦波速度の方がコンクリートの内部条件には敏感であると考えられるが、それ故に種々の要因が未知である場合には測定値のバラツキが大きくなってしまう例が多いが、出来れば健全試験体との相対比較的な適用法が効果的であると思われる。
コンクリートの内部状態を把握する目的では、縦波速度よりも振動の減衰定数の方がより適切であると考えられてはいるが、今回の実験では傾向としては把えられるが、測定値のバラツキが大きい為に明確な結論は得られなかった。これは測定法に幾つかの間暖点があったと思われるが、むしろ測定器をアナログ的な表示にした方が当初は望ましいと考えている。
PDFファイル名 001-01-0005.pdf


検索結果へ戻る】 【検索画面へ戻る