種別 論文
主題 膨張コンクリートと普通コンクリートを用いた橋梁床版の疲労試験
副題
筆頭著者 大川征治(日本道路公団)
連名者1 藤田信一(日本道路公団)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 265
末尾ページ 268
年度 1979
要旨 はじめに
 道路橋の鉄筋コンクリート床版には近年交通量の増加と車両の大型化により過度のひびわれが発生し、時には亀甲状に発達したひびわれが床版上面まで貫通し部分的に抜け落ちるような事故が起っている。このような事故につながるひびわれは作用荷重の外に乾燥収縮等の施工要因による場合も少なくないと考えられ、こうした初期のひびわれを除くことは、鉄筋コンクリート床版の耐疲労性状を改善することにつながると考えられる。
膨張コンクリートは工場二次製品のひびわれ防止にはよく使われ実績もあるが本格的土木構造物への使用は少ない。ここでは膨張セメントの効果を確認するため実物大の床版を作成し膨張コンクリートと普通コンクリートのひびわれ発生機構および、発生後の床版挙動に与える相違について検討したものである。
まとめ
 試験の結果をまとめると次のようになる。
(1)打設時の膨張量は鉄筋の多い(少ない)所で小さく(大きく)、また端部で小さく中央で大きい傾向であったが載荷試験後の応力開放戻り歪は大きく、中央で小さく、中央の拘束鉄筋歪の低下は標準供試体のそれよりかなり大きかった。標準供試体の鉄筋歪は打設9ヶ月で最大値の6割程度まで落ちていた。(2)普通コンクリートのひびわれは低応力下でも発生発達するのに対し、膨張コンクリートのそれはかなりの引張歪が作用しない限り発生せず繰返し載荷に対しては、ひびわれ発生前も後も、非常に安定な傾向を示した。これは、普通コンクリートの場合、組織的な当初から潜在ひびわれとも言うべき欠陥を含んでいるのに対し膨張コンクリートではそれらの欠陥がなくなっているためと思われる。(3)ひびわれ発生時の引張縁コンクリート歪は普通コンクリートの場合引張強度に相当する歪より非常に小さく、膨張コンクリートの場合は導入プレストレスを考慮してもそれと同等又は若干大きかった。これは(2)で述べたようなひびわれ発生機構に差があるためと思われる。
(4)ひびわれ発生後の歪分布から推定される引張側コンクリートの有効度は普通コンクリートと膨張コンクリートで非常に差があった。普通コンクリートは作用歪の大きさに拘わらず引張側コンクリートは無視できるのに対し膨張コンクリートではコンクリートの発生応力度が引張強度以下であれば、その断面を有効とみなしてよいと思われる。(5)膨張コンクリート床版のたわみは普通コンクリート床版のそれより常に小さかった。ひびわれ発生後の前者と後者の比は0.67でこれは(4)の剛度比より推定した値より小さかった。
 床版の破損はひびわれが過度に発達することにより生起されるものであると考えられるが、膨張コンクリートは引張強度に相当するような歪が生じない限りひびわれが発生せず、これによるひびわれ発生荷重は16tonと非常に大きく実用上の範囲ではひびわれは発生しないと考えられる。またひびわれ発生後も同程度の荷重の繰返しに対しては非常に安定で繰返作用の影響を受けにくいことが判った。更にひびわれ発生時においても断面内で中立軸に近い引張応力の小さい所では、コンクリートは有効に働いており普通コンクリートより、かなり優れた性状を示している。岡村らによるひびわれ発生後の床版はねじり作用により貫通ひびわれへと進展し破損へと進んでいくが、鉄筋コンクリートのねじり抵抗は版の場合殆どひびわれの生じてない部分のコンクリートの作用に負っているとしている。したがって、膨張コンクリートが大きな引張抵抗を示すことはひびわれ発生後の床版の耐力に大きな差を生じさせることになると思われる。
 今後の問題点としては以下のものを揚げなければならない。
(1)実験供試体が、普通コンクリート1体、膨張コンクリート1体と少ないため、今後データを積重ねる必要がある。(2)打設時の鉄筋歪が不正確なため不明確であるが実験中、鉄筋のすべりを思わせるような動きがあり、応力開放による戻り歪の結果によると高応力地点で膨張歪が減っており、場所によるとゼロに近い所もあった。打設時の導入プレストレス量と各種要因による低下を正確に知る事が必要である。(3)膨張の量は今回は道路公団の床版に用いられているコンクリートをベースとして余りセメント量を増やさずしかも、膨張プレストレスを積極的に大きく入れる事を狙って決めた。しかしひびわれ発生後の応力レベルは、余り差がなくプレストレスの利用はひびわれ発生又は発達の防止のために使われるべきだと考えられ、従って最適なプレストレス量、膨張材の量はこの点から決められるべきだと考えられる。
PDFファイル名 001-01-0067.pdf


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