種別 論文
主題 人工海水を用いたコンクリート中の鉄筋の腐食と防食に関する研究
副題
筆頭著者 枝広英俊(芝浦工業大学)
連名者1 依田彰彦(足利工業大学)
連名者2
連名者3
連名者4
連名者5
キーワード
10
2
先頭ページ 499
末尾ページ 504
年度 1988
要旨 まえがき
コンクリート中に塩素イオン(以下Cl-とも記す)が存在する理由としては、昭和61年でコンクリート用骨材として約2、650万トン(全細骨材使用量の22.2%)使用されている海砂の除塩不足や、Cl-を含む化学混和剤及び練り混ぜ水による混入、あるいは海水飛沫帯や海塩粒子の浸透・蓄積などがあげられ、許容量を超えると鉄筋の腐食が促され、ひいては鉄筋コンクリート構造物の耐久性を著しく損なう大きな要因となる。その対策として、昨年Cl-の総量規制が実施され、既に(財)国土開発技術センターより15社17機種(昭和62年10月現在)の測定機器が評定を受け、その管理体制の充実が益々図られている。しかし、練り混ぜ時からCl-が含まれるコンクリート中の鉄筋の腐食性状やCl-の挙動に関する研究、さらには硬化したコンクリートの除塩対策は、未だ十分とはいえないのが現状であろう。 そこで本実験研究では、人工海水と一部に天然海水を用いたCl-総量の異なる角柱供試体(15×15×17cmで、一部の供試体は複層模様仕上塗材を施した)に対して、オートクレーブによる腐食の促進試験と屋外自然暴露試験を行い、予め埋め込んだみがき棒鋼の発錆面積率を求め、併せて金属顕微鏡による写真撮影やX線回析による腐食成分の分析を試み、コンクリート中の腐食性状を検討した。また、Cl-の挙動及び除塩に関しては、硬化したコンクリート中の全Cl-を電位差滴定法により測定し、保存方法とその期間の違いによる比較や、除塩方法の違いによる効果を検討した。なお、屋外自然暴露試験による発錆面積率の測定は材令を91日、1年、5年、10年とし、既に材例1年迄の結果を得ているが、発錆が認められず本報告では割愛した。
まとめ
本実験では、人工海水と一部の天然海水を練り混ぜ水として用いたコンクリート中の鉄筋に対して、オートクレーブによる腐食の促進試験を行い、また、硬化コンクリート中のCl-の挙動や除塩方法及びその効果などを検討したが、それらの中から明らかになった主な事柄を以下にまとめた。(1)C1-総量が0.3kg/m3以下では発錆が認められなかったが、0.45kg/m3で発錆が若干認められ、0.6kg/m3を超えると急増傾向にあった。(2)人工海水と天然海水をCl-総量0.45kg/m3で比較すると、天然海水の方が若干多い。(3)仕上塗材を施しオートクレーブによる試験を行うと、仕上塗材に割れや剥がれを生じるが、発錆は少ない。(4)金属顕微鏡による写真撮影の結果、最大で約110μmの孔食深さ(但し5サイクル)を示した。(5)X線回析により幾つかの腐食生成物の成分が判明した。(6)全C1-量は概して打込み上部が多く、保存方法の違いでみると、水中浸漬や屋外自然暴露などの材令91日では、材令7日に比べ平均して5〜7%減少する。またオートクレーブ試験のサイクル数の増大によっても減少するが、試験後は周辺部分に比べて中央部分の全Cl-量が多い。(7)硝酸銀浸漬方法では溶液濃度によって殆ど差異がなく、3時間浸漬で約16%、7日間浸漬で約20%除塩された。また、煮沸法では10〜12%、乾湿くり返し法では約9%除塩された。以上のような成果を得たが、今後も長期材令での屋外自然暴露試験や、可溶性Cl-の測定も含めて挙動・除塩に関する実験を継続中であり、結果が得られ次第改めて検討を加えたい。
PDFファイル名 010-01-1088.pdf


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