種別 | 論文 |
主題 | 耐震構造物の曲げ靱性要求値 |
副題 | |
筆頭著者 | 平尾哲也(東京都立大学大学院) |
連名者1 | 日向文英(大成建設) |
連名者2 | 早川純一(佐藤工業) |
連名者3 | 山崎淳(東京都立大学) |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 11 |
号 | 2 |
先頭ページ | 229 |
末尾ページ | 234 |
年度 | 1989 |
要旨 | 目的 棒部材が組み合わされた構造物である平面ラーメンや立体ラーメンが地震を受ける場合、部材の曲げ靱性をどの様に決めれば構造物の安全性、経済性の最適解になるかという設計上の問題がある。そのため構造物の非弾性化による応答特性の変化と局部的な材料の限界状態を対応づける必要がある。構造物が地震において終局限界状態に至る様々な段階について安全性を評価するために、変形で考慮する場合、定量的取扱のためと、物質の実際の状態の把握のために、構造物の変位δ部材の有限長さの曲り角θ、単位長さの曲り角φ、単位長さの伸び縮みε、を必要に応じて適宜選択して用いている。安全の評価の最終的判断のためには、材料の状態εを用いるのがよいと思われる一方、解析の取扱の効率と現象の物理的解釈のために、δからεへ変換する中途段階としてθや¢を用いている。既往の靱性性能に関する実験は、塑性ヒンジ部を含む比較的簡単な片持ち要素の実験供試体について得ているものが多い。そのような供試体を種々のより複雑な構造物の部分構造要素とみなし、構造要素が発揮できる靱性性能と全体構造の変形挙動の対応関係を数値計算で求めることにより、曲げ靱性要求値の決め方の一例を提案しようとするものである。 結論 (1)片持梁柱の靱性要求値片持梁柱の場合、構造物終局限界状態を、柱下部で圧縮最外縁コンクリートひずみ0.0035時と設定すれば、以下のことが言える。(a)崩壊メカニズム時の、構造物変位δの靱性値は、A−1、A−2、A−3の各断面を用いた場合それぞれ、1.7、1.5、1.3である。この時の降伏変位δyは、柱下端の引張最外縁の鉄筋降伏時のものである。(b)このときの片持梁柱の柱下端部における勒性要求値は、部材引っ張り最外縁鉄筋降伏時の曲率φyを基準として、φu/φyで表した場合、A−1、A−2、A−3断面のそれぞれについて、6.56、3.17、1.97となった。これらの数値は、断面のモーメント・曲率関係を計算する場合の部材引張鉄筋降伏時の値と、圧縮最外縁のコンクリートひずみ0.0035時の値の比に他ならない。(c)塑性ヒンジ回転角βの靱性要求値は、それぞれの断面に対して1.75、1.67、1.52となった。(2)1層ラーメンの鞍性要求値 1層ラーメンの場合、構造物終局限界状態を、崩壊メカニズムとするための最後のヒンジで、圧縮最外縁コンクリートひずみ0.0035と設定すれば、以下の事が言える。(a)崩壊メカニズム時の、1層ラーメンの構造物変位δの靱性値は、各断面についてそれぞれ2.6、2.0、1.6である。この時の降伏変位はδy2と書き、柱下端の圧縮最外縁コンクリートひずみが0.0035となる時のものとした。その理由は、先にも述べたように、1層ラーメンの場合、構造物の荷重・変位(Q−σ)関係がバイリニアー型の弾性域から非弾性域への変化をする時点を構造物としての弾性限界δy2とする方が構造物の地震応答評価のために力学的には合理的であるということ、また、その時点において柱下端部における断面は、圧縮最外縁コンクリートひずみが0.0035となる時にほぼ対応していたので、構造物変位の靱性は、そのδy2を基準に考えるのがより合理的と考えたためである。(b)1層ラーメンの柱下端部における靱性要求値は、部材引張最外縁鉄筋降伏時の曲率φyを基準として、φu/φyで表した場合、各断面についてそれぞれ20.60、14.93、10.09となった。(c)塑性ヒンジ回転角θと曲率φの場合も圧縮最外縁コンクリートひずみが0.0035となる時の値を基準と考えることに挙動の解釈上の利点がある。(3)上記の検討結果にかんがみ、構造物の耐震安全性の評価のためには、構造物の種類、すなわち、片持梁柱、ラーメン、また、細長比などごとに構造物の終局限界状態を設定することが望まれる。部材に対する靱性要求値も、構造物の終局限界状態ごとに考慮するのがよいと思われる。(4)構造解析の方法として、材料非線形と幾何非線形の取り扱い方の基準を決定することが望まれる。 |
PDFファイル名 | 011-01-2037.pdf |