種別 論文
主題 無機系ひびわれ注入材料の基礎的研究
副題
筆頭著者 加藤利美(矢作建設工業)
連名者1 飯坂武男(名城大学)
連名者2 梅原秀哲(名古屋工業大学)
連名者3 吉田弥智(名古屋工業大学)
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 1263
末尾ページ 1268
年度 1990
要旨 はじめに
コンクリート構造物の劣化を考える場合、ひびわれ自体が欠陥となったり、ひびわれが二次的に欠陥を招くなど、その劣化要因のほとんどは、ひびわれを伴うものである。したがって、コンクリート構造物の補修の多くの場合において、ひびわれ注入やひびわれ充損が主要且つ重要な行為である。このように・コンクリート構造物の補修の中で大きなウエイトを占めるひびわれ補修の材料はエポキシ樹脂に代表されるような有機系液状高分子材料の応用により著しく進歩し、その方面の研究も多くなされ、施工実績も豊富である。しかし、有機系液状高分子材料では、その接着性能や注入性能が優れている反面、材料の取扱い易さや湿潤面での接着性能及び長期耐久性において問題があると言われている。一方近年では、セメント材料の微粉加工技術が進歩し、超微粒子セメントが開発され、これらが補修用ひびわれ注入材料としても用いられるようになった。超微粒子セメント系ひびわれ注入材料(以下、本文では無機系注入材料と総称する。)は、その注入性において有機系液状高分子材料に匹敵し、その取扱い易さや価格の安さにおいては、むしろ優れていると言われている。しかし、その接着性能、強度、耐久性などの諸性能は、研究や施工の実績が少なく、十分に解明されているとは言えない。従来から行われているひびわれ補修工法では、有機系材料(樹脂系材料)と無機系材料(セメント系材料)が使用されているが、概ね次のような使い分けがなされている。有機系材料は、主に微細ひびわれへの注入や構造補強を伴うひびわれ注入に用いられている。それは、有機系材料の注入性能の良さや接着性能の良さによるものである。また、一般にその価格が高く多量に使用できないことや、粘度が小さいことによるダレ現象があることなどの理由で大きなひびわれにはあまり用いられないようである。無機系材料は、主に幅の広いひびわれへの注入や隙間への充填に用いられている。それは、有機系材料とは対照的に、その注入性は劣るが、一般に価格が安く大量に使用でき、粘度の制御も容易であるからと言える。しかし、以上に述べたように、ひびわれ注入材料が施工性や経済性だけによる理由で選定されてきたことによって、被着部材の状態や構造物の環境に適切に対応できない場合、次のような問題点も指摘されている。エポキシ樹脂のような有機系材料では、強度は大きいが、熱膨張係数がコンクリートに比べ大きく、温度変化をうける箇所での付着性能に問題がある。また、接着界面が湿潤状態の場合には、接着界面における正常な化学的結合が阻害されるため、十分な接着強度が期待できない。このような状況のもと、無機系のひびわれ注入材料においても優れた注入性能が得られつつある今日、材料の選択に対し、より慎重な判断が求められている。本研究では、現在補修用注入材料として使用されている有機系液状高分子材料と無機系ひびわれ注入材料を用いて、コンクリートのひびわれモデルの補修実験を行い、その補修効果を比較するとともに、これらの実験結果により無機系ひびわれ注入材料の特徴や実用上の問題点を明らかにし、今後に向けての改善点の検討を行うことを目的とした。
結論
3種類のひびわれ注入材料による補修実験により得られた結論は以下の通りである。(1)無機系注入材料は水比が大きい配合で用いられる為、ブリージングが原因と思われる空隙が硬化体内部に形成され、その空隙により強度低下が生じること、また、乾燥により反応水が失われ、材令7日程度で強度の増進が止まる場合があることが明らかになった。(2)無機系注入材料の破壊はすべて注入材内部で生じ、その界面接着力は、その材料自身の凝集力を上回ることが判明した。一方エポキシ系注入材料では多くの破壊が接着界面で生じ、その強度が母材コンクリートの曲げ強度をかなり下回る場合もあることが明らかになった。(3)初期材令における高温環境は一部のエポキシ樹脂の強度の発現を阻害するが、直ちにそれが材料の劣化をもたらすものではないことが明らかになった。また、無機系注入材料では初期材令における高温環境は、強度の発現を促進し、悪影響を及ぼすことはほとんど無いと認められた。(4)エポキシ樹脂注入材料では被着体が湿潤状態の場合、7日程度までの材令初期に限り接着強度の発現が遅れる傾向にあるが、無機系注入材料は被着体の接着条件の影響をあまり受けないことが明らかになった。今回の実験で確認できなかった長期材令における注入材科の耐久性は、今後野外暴露試験等を行うことによって検討していきたい。
PDFファイル名 012-01-1220.pdf


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