種別 | 論文 |
主題 | 砕石粉のコンクリートへの有効利用に関する研究 |
副題 | |
筆頭著者 | 田村博(日本建築総合試験所) |
連名者1 | 高橋利一(日本建築総合試験所) |
連名者2 | 五十嵐千津雄(日本建築総合試験所) |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 13 |
号 | 1 |
先頭ページ | 57 |
末尾ページ | 62 |
年度 | 1991 |
要旨 | はじめに 骨材資源の枯渇に伴って、砕石・砕砂が活用されているが、それに伴って産出される砕石粉は有効利用されないばかりか、放置されて環境汚染の原因ともなっている。また、砕石粉の産出量も相当量に上り、近畿砕石協同組合の最近の調査結果によれば、大阪府近郊の砕石工場35工場では合計50万t/年にも達し、それら一工場当たりの平均砕石生産費63万t/年にほぼ匹敵する量となっている。我が国では、洗い試験を行い、細骨材中の微粉末量を規制している。泥分量が過大な骨材をコンクリートに使用すると、単位水量が増大する、乾燥収縮量が増大する、強度が低下する、プラスチックひびわれが生じ易いなどの悪影響がでるためである。しかし、洗い試験は有害な膨張性の粘土量だけを評価する方法ではなく、無害な石粉量も含んで評価してしまう。有害な粘土を評価する方法としては、粉末X線回折や示差熱分析等の岩石学的調査の他、砂当量試験やメチレンブルー法などがある。我が国でも、砂当量試験がASTM D 2419を手本にして1989年、JIS A 1801コンクリート生産工程管理用試験方法(コンクリート用細骨材の砂当量試験方法)として標準化された。砂当量試験は細骨材に凝集剤溶液を加え、細骨材中に含まれる粘土質物質を分散、綿毛化させて分離沈降させ、粘土質物質層上面の読みに対する砂層上面の読みによって砂当量(SE値)を求めるものであり、洗い試験より簡便で迅速な試験方法であるとともに、細骨材に含まれる有害な微粉末量の指標を得ることが出来る、有効な試験方法である。一方、海外の事情は次のとおりである。ドイツでは、砕石粉をコンクリート用混和材として規定するとともに、コンクリート中の最大許容微粉量(セメント量+砕石粉量+その他の混和材量)を規定しており、砕石粉を使い易い環境が出来上がっている。英国では、岩石を砕いて生産した砕砂の場合には、天然砂や天然砂利を砕いた細骨材の場合の5倍の微粉量を許容している(日本の規定の3倍を許容している)。これはおそらく、砕砂中の微粉末には、有害な粘土等の量が、他の細骨材に比べて少ないことを考慮したためと推測される。フランスでも、砂当量試験やメチレンブルー法を用いて微粉末中の泥分量を制御しながら、微粉末を有効に利用している。スペインでも、最近細骨材の微粉末に関する新しい規定を作るために実施したJ.L.Ramirezらの研究があり、砂当量やメチレンブルー値は、細骨材中の微粉末量や粘土量をコンクリートに無害な範囲に制御するための、有効な指標であるとしている。我が国でも微粉末に関する研究は、山崎寛司氏の研究の他数多く行われてきたが、微粉末をコンクリートに有効利用するまでには到っていないのが現状である。本論文は、以上のような背景のもとに、当試験所が1989年より自主研究として取り組んでいる、砕石粉のコンクリートへの有効利用に関する研究の成果の一部を述べたものであり、山砂、砕砂および砕石粉を混合した細骨材の砂当量試験結果ならびに、砕石粉使用モルタルのアルカリ骨材反応性に関する実験から成っている。 おわりに 以上の実験結果に基づき、砕石粉のコンクリートヘの利用の可能性ならびに今後の課題を要約すると、以下のとおりである。(1)砕石粉は、コンクリートに有害な粘土等の不純物量が、山砂や砕砂に含まれる微粒分に比べて少ないことが確認され、コンクリート用混和材料として利用可能である。(2)砕石粉をコンクリート用混和材料として用いた場合に期待できる効果は種々考えられるが、その1つとして、アルカリ骨材反応の抑制があることが確認された。(3)砕石粉をコンクリート用混和材料として用いるためには、先ず砕石粉の品質評価試験方法を確立する必要があり、砂当量試験やメチレンブルー試験が同試験方法として有望である。したがってまず、砂当量試験、メチレンブルー試験や岩石学的調査を、国内の各種岩種砕石粉ならびに、各種生産工程により生産される砕石粉について行い、砕石粉の品質の実態を調査する必要がある。同調査結果に基づいて代表的な砕石粉を選定し、砕石粉を使用したコンクリートに関する各種実験を行い、砕石粉使用コンクリートの性能を確認するとともに、砕石粉の品質評価規準ならびに同コンクリートの調合設計・施工指針を策定するのがよい。生コンクリート業界では、細骨材中あるいはコンクリート中の微粒分を補うため、品質が良好であれば、砕石粉を使用したいと考えている。また最近は、高強度コンクリート、RCD、RCCPやハイパフォーマンスコンクリートなどの多種多様なコンクリートの検討が盛んに行われているが、それらのコンクリートについても微粉末の影響は大きく、砕石粉の活用が充分考えられるところである。一方、砕石粉の品質評価試験方法の一つとして有望な砂当量試験もJIS規格として規定された。砕石粉の利用は、資源の有効利用ならびに大気環境保全の見地から、一般社会からも強く望まれている。以上要するに、砕石粉をコンクリートヘ利用するための環境は充分熟しており、残された課題を関係者挙げて、積極的に研究することが必要であろう。 |
PDFファイル名 | 013-01-1006.pdf |