種別 | 論文 |
主題 | コンクリートのフラクチャープロセスゾーンにおける破壊メカニズムに関する研究 |
副題 | |
筆頭著者 | 上田稔(中部電力) |
連名者1 | 長谷部宣男(名古屋工業大学) |
連名者2 | 佐藤正俊(中部電力) |
連名者3 | 近藤久雄(中部電力) |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 14 |
号 | 1 |
先頭ページ | 543 |
末尾ページ | 548 |
年度 | 1992 |
要旨 | まえがき 破壊力学によりコンクリートを扱う研究が多くなされ、力学特性の解明などに多くの成果が期待されている。コンクリートの破壊力学において、最も重要な問題の一つが、コンクリートの破壊力学を特徴づけるクラック先端付近に形成されるフラクチャープロセスゾーン(以下FPZと略す)の問題である。Mindnessは多くの研究者によるFPZの観察結果をまとめ、FPZの明確卒大きさはなく、それは供試体の寸法、形状や計測方法に大きく依存すると思われるとしている。また、FPZの存在によるコンクリートの非線形挙動を把握するために、そのモデル化とともに、引張軟化曲線や破壊エネルギー(以下TSC、GFと略す)を求める試験が実施され、その要因と影響についての試験結果が示されている。TSCやGFに及ぼす要因としては、骨材に関しては大きさ、形状、粒度分布、骨材の硬さ、骨材表面の粗滑度やブリージングなどによる骨材界面の欠陥の位置と大きさなどが上げられる。その他の要因としては水セメント比、供試体の形状、寸法、載荷速度、試験方法と多くの要因が指摘される。しかしこれらの要因は複雑に影響を与え、そのTSCやGFに与える定性的な影響の理由についても、明確にされているとはいい難い点もいくつかあると思われる。さらに同じ条件で試験を実施しても、ばらつきが大きく、ばらつきの多くは破面に介在する骨材の大きさ、量、および位置に依るとの報告もされている。様々な試験条件のもとで、それぞれFPZが形成され、その結果としてTSCやGFが求められていることを考えると、上述のFPZそのものや、試験結果の要因やばらつきに対する特性をより明確にするためには、FPZの破壊メカニズムを解明することが重要であると考えられる。FPZの存在は、コンクリートが骨材とセメントペーストからなる、複合材料としての非均質性によるものと考えられる。コンクリートの破壊は骨材の界面のはく離を起点として発生することはよく知られているが、このはく離の進展状況がその後の破壊にも影響を及ぼすこと、そしてこのためと考えられるが、TSCやGFに及ぼす骨材に関する要因が種々にわたることを考えると、骨材界面のはく離や骨材から発生するクラックの進展特性の解明が、非常に重要であると考えられ、この点から本研究では、粗骨材に起因する破壊と干渉に着目し考察を加える。様々の大きさの骨材とセメントペーストの複合体であるコンクリートに、線形破壊力学を直接適用するには限界がある。しかし本研究では、粗骨材をモデル化しての粗骨材界面のはく離や、はく離が生じた粗骨材からモルタル中に発生するクラックに対し、はく離先端の応力特異性値や応力拡大係数(以下SIFと略す)を適用するもので、その適用はコンクリートを構成する粗骨材とモルタルの界面やモルタルであり、材料的に線形破壊力学が適用可能であると考えられる。著者らは線形破壊力学における応力特異性値を用い、円形やく形のモデル骨材を有する供試体の圧縮試験のはく離やクラックの進展状況が、定性的に説明可能であることを示している。そこで本研究は、FPZの変位計測結果や、骨材界面のはく離やクラックの線形破壊力学における応力特異性値の数値解析結果に基づき、FPZの破壊メカニズムについて破壊力学的考察を行う。文献8)に従えば、コンクリートの構造を中間レベルで説明するものである。 あとがき FPZの破壊メカニズムについて、FPZの変位計測結果や、破壊力学における応力特異性値の解析結果等を用いて考察した。FPZの破壊は骨材界面のはく離の発生、進展とそのはく離の干渉が不安定さを徐々に増し、クラックの発生が生じ、さらにいくつかのクラックとはく離の成長、合体により破面が形成されるメカニズムであることを破壊力学的に示した。この破壊メカニズムに対して、コンクリートの破壊の進行状況に影響を与える種々の要因に対する考察を行うことにより、FPZやTSC、GFの特性に関する説明がより明確になされると考えられる。 |
PDFファイル名 | 014-01-1091.pdf |