種別 論文
主題 コンクリート構造物に及ぼす酸性雨の影響に関する研究
副題
筆頭著者 河野広隆(建設省)
連名者1 渡辺博志(建設省)
連名者2 堤博文(麻生セメント)
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
14
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先頭ページ 909
末尾ページ 914
年度 1992
要旨 まえがき
通常、コンクリートはセメントの水和反応によって生じた水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を多く含んでいるためその内部はpH=12〜13の強アルカリ性に保たれており、鉄筋コンクリート構造物では、この強アルカリのコンクリートで鉄筋を包むことにより、鉄筋が錆びるのを防いでいる。しかし、酸性雨の影響により降雨中の酸と水酸化カルシウムが中和反応を起こし、コンクリート中のアルカリ性物質(水酸化カルシウム)が消耗して、コンクリートの中性化が加速され鉄筋の腐食を引き起こしたり、コンクリート中の成分が溶出することによりコンクリート内部がポーラスになり強度が低下して、コンクリート構造物の早期劣化につながるのではないかといった疑問がもたれている。現在、日本各地で、降雨のpHの観測がなされており、この観測結果によると、現在我が国における酸性雨のpHはおおよそ4.0ないし4.5程度であることが報告されている。これらのpH値の実態をもとに酸とアルカリの中和反応から理論的に検討してみると酸性雨はコンクリートの劣化に甚大な影響を及ぼすとは考えにくい。しかしながら、コンクリートの劣化にはひびわれや、構造物の置かれている条件などの影響により計算では把握できない部分も多く、酸性雨の影響を的確に捉えるには、実構造物の実態調査および裏付けとなる実験による検討が必要である。本報告は、コンクリート構造物に及ぼす酸性雨の影響を明らかにするために行った、土木用コンクリート構造物の実態調査および、酸性水による劣化試験の結果について述べたものである。
まとめ
以上の研究結果をまとめると、以下のようになる。コンクリート構造物の実態調査により、1)ひびわれ近傍部と健全部では、コンクリートコアの強度に有為な差はなく、酸性雨によって水酸化カルシウムが溶けだし、圧縮強度が大幅に低下するという傾向は見られなかった。2)雨の当たる側と当たらない側では、コンクリートの中性化速度に差があり、雨の当たらない方が中性化速度は速い。3)コンクリートの表面と内部では全細孔量に差があるが、必ず表面に近いほど細孔量は多い傾向にあるとはいえず、酸性雨の影響があるとは判断できない。また酸性水による浸せき試験、つらら生成試験から分かったこととして、4)コンクリートのつららは、酸性水の場合だけでなく、純水を滴下した時にも生じ酸性雨に起因した現象ではない。5)pH4程度の酸性水では、コンクリートの強度増進に及ぼす影響は僅かである。6)pH4程度の酸性水では、コンクリートの中性化を促進する効果が認められない。があげられる。しかし、酸性水がコンクリートに非常に僅かではあるが悪影響をもたらしていることは否定できず、コンクリート構造物の維持管理を万全に行うためには、今後酸によるコンクリートの品質低下速度を明確にし、鉄筋腐食との関連を明らかにする必要がある。
PDFファイル名 014-01-1157.pdf


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