種別 論文
主題 針貫入を用いたコンクリートの凍害劣化の診断について
副題
筆頭著者 斎藤裕(東北電力)
連名者1 三浦尚(東北大学)
連名者2 堀宗朗(東北大学)
連名者3 長田光正(東北大学大学院)
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 997
末尾ページ 1002
年度 1992
要旨 はじめに
厳しい環境下において使用される場合、コンクリート構造物にさまざまな劣化が発生することがあり、構造物の維持管理を図るために補修や改修を行う必要が生じる。この際、コンクリートの劣化の度合を診断し、適切な補修改修の規模及び方法を決定することが望ましい。通常、劣化度の診断は正確であることと同時に、診断時に構造物に与える損傷が少ないことが要求されるが、凍害のような劣化に対しては、表面からの深さによって異なる劣化の状況も診断できることも必要である。これは、凍害は水の浸透とともに構造物表面から内部へと進行していき、劣化の度合は深さ方向で一様ではないためである。したがって、凍害を被る構造物については、表面から得られる情報だけでは劣化を的確に診断することは難しく、有効な診断法を見つける必要があると思われる。以上の点を基にして、凍害を被るコンクリート構造物の劣化度をより的確に診断するために、著者らは、1)できるだけ非破壊に近い形で、2)健全と思われる構造物内部を基準とする、3)定量的な劣化の目安を用いた、方法の可能性を検討している。この条件を満たすために、構造物からボーリングによってコア供試体を抜き、適当な深さ毎にその供試体から採取された小型サンプルを室内実験に供し、劣化診断を行なうことを提案している。このような劣化診断では、供試体本数は少ないものの十分深くまで構造物からコア供試体を抜くことで条件1)と2)が、また、サンプルに施す室内実験を精密なものとすることで条件3)が満たされると考えられる。著者らが提案している劣化診断の問題は、劣化の適切な目安を選定し、そしてその目安を測定ないし推定することである。通常、凍害の目安には、たわみ振動数から算出される動弾性係数の低下が用いられる。しかし、設計において最重要視されること、一般に理解し易い力学量であること、等といった理由から、弾性係数とは別に、圧縮強度ないしその低下を低温劣化の目安にすることが考えられる。すなわち、凍害を被る場合、健全と思われる内部に比べ表面付近では圧縮強度が低下すると予想されるため、適当な深さ毎に強度を推定することで劣化の度合や進行の状況を判断し、構造物の劣化診断を行うのである。圧縮強度やその低下を劣化診断の目安とする場合、上記の3つの条件を満たしながら、それを測定ないし推定しなければならない。本研究では、針貫入を用いた圧縮強度の推定方法を提案する。これは、小型サンプルに細い針を貫入し、針の貫入量と針に加わる荷重を連続的に測定し、その関係からコンクリートの圧縮強度を推定するものである。この方法自体は新規なものであるため、研究の第1段階では、針貫入による圧縮強度の推定方法自体を検討し、合理的と思われる推定方法を確立した。その結果を基に、研究の第2段階として、低温劣化の診断の可能性を探るために、凍結融解の繰り返しによって劣化した室内実験供試体にこの方法を適用し、強度推定の精度を調べた。(なお、局所的な強度の推定には、微小硬度の利用も考えられるが、測定の精度の点に問題があるようにであり、本研究では検討されなかった。)
結論
小型サンプルに針をコンクリートに貫入するために要する仕事から、コンクリートの強度を推定する可能性が示された。仕事の算出には、針の貫入量と加わる荷重の連続的な測定し、十分多数の貫入箇所が必要である。検討すべき課題は残されているものの、この針貫入を用いることで、凍害を被ったコンクリートの劣化の度合を診断することは可能であると考えられる。
PDFファイル名 014-01-1173.pdf


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