種別 論文
主題 コンクリート充填角形鋼管柱の耐震性能改善法に関する実験的研究
副題
筆頭著者 崎野健治(九州大学)
連名者1 蜷川利彦(九州大学)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
14
2
先頭ページ 797
末尾ページ 802
年度 1992
要旨 はじめに
コンクリート充填鋼管構造は、靱性のある耐震的な挙動を示すことが知られており、最近では集合住宅等の超高層建物で用いられてきている。しかし、コンクリート充填鋼管柱は、超高層建物の下層の柱のように大きな軸力を受けている場合に、地震力のような大きな繰り返しせん断力を受けると、塑性ヒンジ領域の鋼管の局部座屈や充填コンクリートの圧潰により、材軸方向に大きな縮みを生じるという欠点を持っている。材軸方向の縮みは、地震後の修復が困難なことや建具等の二次部材の破損・落下を招き危険であり、大きな問題となる。しかし、軸縮みの定量的把握やそれを抑制する方法についてはあまり研究がなされていないのが現状である。円形鋼管を用いれば軸縮み量をある程度低減する事ができるが、平面計画上、加工上の納まりや断面効率より、実際の建物では円形の柱はあまり用いられない。軸縮み量を低減することは角形鋼管の板厚を厚くすることでも可能であるが、円形に比べ、角形は構造的にコンクリートの拘束効果が小さく局部座屈も発生しやすいので、効果を上げるためにはかなり板厚を厚くしなくてはならないと考えられ、あまり賢明な方法ではない。また、日本の超高層建物の設計では、原則的には梁崩壊形の設計がなされるため、大きな軸縮みを生じるのは、崩壊メカニズム形成時に塑性ヒンジとなることが避けられない一階の柱脚のみと考えられるので、建物としてはこの部分の軸縮みを抑制する補強を施せばよいことになる。そこで、著者らは軸縮みの抑制を含むコンクリート充填角形鋼管柱の耐震性能を改善する方法として、円形鋼管を塑性ヒンジ領域に局部的に埋設し補強する方法を提案する。これは円形鋼管の拘束効果で塑性ヒンジ領域のコンクリートの圧潰や鋼管の局部座屈を抑制しようとするものである。本論では、このような柱の一定軸力下での繰り返し曲げせん断実験を行い、弾塑性性状を明らかにするとともに、補強の有効性の検討を行う。
結論および今後の研究課題
柱端部を埋設円形鋼管で局部補強したコンクリート充填角形鋼管柱の一定軸力(軸力比0.3)下での繰り返し曲げせん断実験を行い、以下の結果を得た。1)柱端部のみを補強することの最大耐力に対する影響はほとんど無い。しかし、柱梁接合部まで通して補強することによりかなり耐力が上昇する。これは、埋設円形鋼管が曲げを負担しているためと思われる。2)柱端部の補強により大変形時の耐力低下を抑制することができる。3)柱の軸縮み量は部材角1.5×10−2radまでは補強の有無、補強方法詳細にかかわらずほとんど変わらないが、それを超えると差が顕著に現れ、端部のみ補強した柱が最も小さく、補強無しの柱が最も大きい。柱梁接合部を通して補強した柱の縮み量が端部のみ補強した柱のそれより大きい原因としては、埋設円形鋼管が曲げを負担して降伏し、コンクリートに対する拘束効果が減少したことと、耐力が上昇し角形鋼管が材軸中央部で降伏して拘束効果が弱まり、その部分のコンクリートがより大きな軸縮みを生じたことの二点が考えられる。よって、円形鋼管の埋設補強はコンクリート充填角形鋼管柱の大変形時の耐震性能をかなり改善できることが明らかとなった。補強方法としては、柱の軸縮みを抑えるという点では端部のみの補強のほうが有効であるが、柱梁接合部まで通して補強することにより柱の耐力の上昇を期待できる。どちらの補強法が優れているかということは使用目的や状況によるであろう。また、どちらの補強方法も軸縮みを充分に抑制しているとはいえず、超高層建物の下層の外柱では起こり得る軸力比0.6程度の高軸力を受けた場合の補強効果には疑問が残る。また、角形鋼管の水平方向ひずみの測定結果をみると、埋設円形鋼管で補強した柱は材軸中央部で角形鋼管が膨らんでおり、この部分でコンクリートに軸縮みが生じている可能性がある。これは、材軸中央部も埋設円形鋼管で補強する必要があることを示唆している。埋設円形鋼管補強の有効性を明らかにするためには、高軸力下における柱の弾塑性性状や補強範囲の検討を行う必要があると思われる。
PDFファイル名 014-01-2138.pdf


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