種別 | 論文 |
主題 | 高強度材料を用いたRC部材の変形能評価に関する研究 |
副題 | |
筆頭著者 | 菊池政智(新潟大学大学院) |
連名者1 | 加藤大介(新潟大学) |
連名者2 | |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 15 |
号 | 2 |
先頭ページ | 743 |
末尾ページ | 748 |
年度 | 1993 |
要旨 | はじめに 建築学会の鉄筋コンクリート(RC)造建物の終局強度型耐震設計指針(学会指針)の主筋の付着に対する設計法は、曲げ作用に対する付着強度の確保とトラス機構に対する強度の確保の2本だてになっており、曲げ作用に対するものは曲げによる付着応力度と付着強度の比較という形で評価されている。付着強度は本文に簡略化された設計式が提案されているが、解説に示されている精算式を用いても良いことになっている。このとき、塑性ヒンジが生じないかあるいは片側のみに生じる部材については、藤井らの提案式を簡略化した最大強度式を、両側にヒンジが生じる部材については、塑性変形により付着が厳しくなることを考え、最大強度後の最終付着強度を用いている。また、する付着応力度は曲げひび割れによる影響を考慮し、付着長さを全せいから有効せいを引いたものとしている。筆者らは、この付着に対する設計法が、塑性変形を生じる高強度材料を用いた部材にも適用できるかどうかを検討することを目的に、高強度材料を用いたRC造高軸力柱の曲げ実験を行った。その結果、高軸力を受ける試験体では、試験体としての曲げ降伏後に圧縮筋が降伏し歪硬化域に入るため、付着長さが学会指針による評価式より短くなり、このために付着指標によるすべりの評価とは相反して主筋がすべりを起こしやすくなっていることが明らかになった。また、この主筋の滑りと同時に試験体の復元力が徐々に低下し、主筋の滑りが試験体としての靭性限界点の原因となっていることも分かった。さらに、筆者らは以上の実験結果を基に、主筋の付着滑りの変形能に及ぼす評価式を検討した。しかしながら、データ数が少なく、また、その時点では高強度材料にも対応する付着強度式が提案されていないこともあって、提案式の精度等の評価が困難であった。そこで、本報告では、最近提案された高強度材料用の付着強度式も用いて、付着破壊で靭性が決定される場合の変形能評価式について検討し、さらに、設計法に対しても提案をおこなった。なお、実験データに関しても最近、実験が行われたものについて、低強度から高強度材料までを広く対象とした。 まとめ (1)各付着強度指標と靭性限界部材角の関係を検討した内容を、以下の(a)〜(d)にまとめる。(a)各付着強度指標と靭性限界部材角の関係はばらつきが大きいが、回帰直線を求めてみると右下がりの傾向がみられ、これは付着強度に依存する靭性評価式となる。また、設計において曲げ降伏後の付着破壊を防止するための基準値を設定するために、危険率が約10%となるような評価式も作成した。(b)各式のばらつきは、学会指針の最終強度式を用いた場合が最も大きく、学会指針の最大強度式、角による提案式、および、前田・小谷による提案式によるものは、同程度であった。(c)文献[5]では、中子筋の有るものの精度が、中子筋の無いものより大きく劣っていたが、データ数の増加により、両者の精度の差はなくなった。一方、各式とも梁と柱で挙動の差は、認められた。(d)軸力の影響を再評価したところ、文献[3]で提案した軸力により付着長さが減少するとした式(2)の妥当性が認められた。(2)以上の結果は両端が曲げ降伏する試験体について検討されたものである。片側のみが降伏する柱部材などの設計に適用する場合には、主筋の応力状態を現実に即して評価する必要がある。この場合、主筋が引張力を受ける場合のみでなく圧縮力を受ける場合についても検討し、巌しい応力状態になる方で設計する。精算しない場合に学会指針の条文のように降伏する場合には主筋応力度に上限強度を、降伏しない場合には信頼強度を適用すれば、安全側といえる。 |
PDFファイル名 | 015-01-2125.pdf |