種別 論文
主題 電食試験により腐食したRC柱の耐震性能に関する実験的研究
副題
筆頭著者 山川哲雄(琉球大学)
連名者1 伊良波繁雄(琉球大学)
連名者2 玉城康哉(国建)
連名者3 太田達見(清水建設)
連名者4
連名者5
キーワード
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先頭ページ 805
末尾ページ 810
年度 1994
要旨 1.序
 ウォーターフロント地域における種々のRC造建築物や、海岸沿いに数多く建設された巨大なRC造構築物である原子力発電所などを考えた場合、塩害に対する耐久性能と耐震性能に関する劣化限度を明らかにすることは、21世紀に向けて必要、かつ重要な研究課題であると考えられる。と同時に、このような研究は日本で最も苛酷な塩害環境下にあり、しかも塩害によるRC造建築物の損傷が他の地域に比較してきわめて多い沖縄で行うにふさわしい研究であると考える。本研究は沖縄も含め、広く強震地域に位置する日本及び諸外国のウォーターフロント地域における、RC造建築物の耐震性と耐久性がからんだ共通課題として捉えることもできる。特に、耐久性の検証には長い期間を必要とする。以上の観点から、1992年度に壁筋に鉄筋を用いたRC造耐力壁試験体と、壁筋に連続繊維補強筋(FRP筋)を用いた耐力壁試験体を合計11体製作し、そのうちの6体は東シナ海に面した沖縄の海岸で1992年12月10日以降、自然暴露中である。残りの5体は電食により鉄筋を強制的に腐食させた試験体を含めて、一定軸圧縮力下の正負繰り返し水平加力実験を終了している。
これらの実験結果によれば、鉄筋が錆びてコンクリートにひび割れが生じると、RC造耐力壁の耐震性能、なかでも特にじん性が明瞭に劣化することが分かった。なお、以上のことは1993年度に行った耐力壁の補充実験でも再度検討され、さらに研究を進めなければならない必要性を強く痛感させられた。以上のことから、本研究の目的は次の3点に集約される。
1)柱、及び耐力壁に関して、鉄筋腐食が耐震性能(剛性、耐力、じん性、エネルギー吸収量)に及ぼす影響を明らかにする。ただし、本研究では柱に限定する。
2)鉄筋腐食により損傷を受けた鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断の目安と、地震時のかぶりコンクリートの剥落に対する居住安全性についても検討する。
3)亜熱帯の塩害環境下における沖縄において、材料用試験体を海岸に暴露することにより、鉄筋の腐食速度に及ぼす各種要因による影響を究明する。
 以上の研究目的に基づき、構造的な面と材料的な面の両面から総合して、鉄筋の限界腐食量(許容腐食量)を明らかにすることが本研究の最終目標である。そのために、本研究は亜熱帯の塩害環境下における沖縄において、構造実験と材料実験を同一条件(コンクリート、鉄筋、暴露場所、暴露期間)のもとで、同時に行う実験的研究である。これまでの研究がそれぞれ個別に行なわれ、鉄筋腐食によるRC造構築物の耐久性など材料的アプローチに多くの関心がむけられてきた。特に沖縄では、RC造の学校校舎や橋を中心とした塩害による被害調査も数多くなされてきた。また、最近では著者らも沖縄におけるRC造集合住宅の塩害による損傷調査を行った。そういう中にあって、鉄筋腐食がRC部材の力学的性状に及ぼす影響については、RC梁の耐力や付着性状に注目した研究が散見される程度である。しかし、本研究ではすべて同一条件のもとで材料試験(暴露試験を含む)と構造実験を平行して行ない、両者から総合して鉄筋の限界腐食量、及びそれに基づいたRC部材の寿命予測を求めるために、耐震・耐久の両性能の劣化限度を本研究で明らかにしようとする実験的研究である。その中で本論では、電食により鉄筋を強制的に腐食させたRC柱試験体4体(このうち1体は電食なしの基準試験体)の一定軸圧縮力下(0.22cσB)の正負繰り返し水平加力実験結果について述べる。
6.結論
 曲げ破壊先行タイプの柱試験体で、かつ軸力が0.22cσBの一定軸圧縮力下においては、健全なRC試験体と電食した柱試験体の間には、耐震性能に関して顕著な差異がほとんど見られなかったものの、剛性、エネルギー吸収能力に関してはむしろ電食試験体が健全試験体を若干上回っていた。また、総積算電流量を1、2、5倍と増加させても、顕著な耐震性能の劣化は今回の実験ではほとんど観察されなかった。その理由としては、鉄筋の腐食により鉄筋自身やカバーコンクリートの揖傷は早期に進むとしても、比較的多量な帯筋(Pw=0.85%)によりコアコンクリートが健全のまま横拘束されているからと考えられる。また、この横拘束効果を無視しては実験結果を解析で説明できないことも明らかになった。なお、この電食試験法が実際の塩害を反映しているかどうかは、現在暴露中の試験体とも合わせて今後検討する必要がある。と同時に、軸圧縮力の大きさ、主筋量、帯筋量、せん断スパン比等実験パラメータの検討も含めて、塩害を受けたRC柱の耐震・耐久性能の劣化限度に関する鉄筋の許容腐食量などの究明にさらに取り組む予定である。
PDFファイル名 016-01-1133.pdf


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