種別 | 論文 |
主題 | Caイオンの溶脱に伴うセメント水和物の変質促進試験法としての電気的手法の適用性 |
副題 | |
筆頭著者 | 斉藤裕司(大林組) |
連名者1 | 中根淳(大林組) |
連名者2 | 藤原愛(原子力環境整備センター) |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 16 |
号 | 1 |
先頭ページ | 901 |
末尾ページ | 906 |
年度 | 1994 |
要旨 | 1.まえがき 中・高レベル放射性廃棄物処分施設の構造体、もしくは人工バリア材にコンクリートの利用を考えるとき、水と接するコンクリートの超長期における変質挙動の解明が求められている。その際の変質機構には、セメント水和物が水にごくわずかづつ溶解していくことによる水和組織の変質、及び地下水中に含まれるコンクリートに有害な成分(例えばCl−やSO42-など)による変質の二つが考えられる。筆者等は水和物が水に溶解していく現象を検討するための室内促進試験法として、試体に電位勾配を与えて、Ca2+の移動速度を速める方法の有効性を検討してきた。本報告は、この試験法によって実際のコンクリート構造体で長期間経過後に想定される変質状態、すなわち表面から内部に向かって徐々に変質が進行していく状態が試験体レベルで再現できるかに着目して、その有効性を検討した結果について述べている。 4.まとめ 電気的手法が水と接したコンクリートからCaが溶出することによる変質挙動を再現するための促進試験法としての適用性を検討するため、水セメント比が65%、直径が2cmで長さが10cmの円柱状のモルタル試験体を使用し、5V/cmの電位勾配を与え、12ヵ月間のCaの溶出量とその変質状況を調査して、以下のことが明らかとなった。 (1)水に溶出したCa量は経過日数とともに放物線的に増加し、12ヵ月経過時に1,566mgとなった。 (2)12ヵ月後の試験体断面の目視観察結果によれば、陰極側の表面部(約2mm)の組織は 非常に粗く、茶鴇色に変色していること、陰極側表面から約3cmまでの範囲は組織がやや粗に変化していること、それ以深は緻密な組織であることなどが明確に識別できた。 (3)X線回折による鉱物の構成、及び化学分析によるC−S−HのCa/Siモル比の測定結果から、陰極側表面部(約2mm)はC−S−H のCaもほとんど溶解し、シリカゲルに変化していること、組織が粗に変化した部分ではCa(OH)2がほとんど溶解しており、C−S−HのCaも一部溶解していること、組織が緻密な部分の水和物は全く変質していないことなどが明らかとなり、Caの溶解に伴う水和物の変質程度は陰極側ほど進んでいると判定された。 (4)上記の水和物の変質に伴って試験体の単位容積質量は減少する。一方、含水率は増大し、総細孔量も増大し、水和組織はポーラスになっていく。 (5)(3)、(4)に述べた変質挙動は、水と接している実際のコンクリートで徐々に起こるであろうと考えられるセメント水和物からCaが溶脱することによる変質挙動を模擬していると推察され、この手法はこの挙動を試験体レベルで促進できる有効な試験法と判断される。 |
PDFファイル名 | 016-01-1149.pdf |