種別 | 論文 |
主題 | 80数年経過した鉄筋コンクリートアーチ橋(石川橋)の解体調査 |
副題 | |
筆頭著者 | 鳥居和之(金沢大学) |
連名者1 | 上田信ニ(真柄建設) |
連名者2 | 西本俊晴(真柄建設) |
連名者3 | 川村満紀(金沢大学) |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 16 |
号 | 1 |
先頭ページ | 983 |
末尾ページ | 988 |
年度 | 1994 |
要旨 | 1.まえがき 我が国で最も古い鉄筋コンクリート橋は、明治36年に建設された京都府琵琶湖疎水運河に架けられたメラン式アーチ橋(橋長:3.7m)と神戸市若狭橋(スラブ橋、橋長:3.7m)であるが、両橋の架設以後、明治時代には約40の鉄筋コンクリート造の橋が建設されたと報告されている。石川橋(橋長:24.9m、幅員:10.5m)は、明治44年3月に金沢城の百間堀の水堀を埋立て構築されており、兼六園と金沢城の石川門とを結ぶ橋として金沢市民や観光客に親しまれてきた。明治時代に架設された鉄筋コンクリート橋で現存するものは次第に少なくなってきており、それらの橋は歴史的建造物としての価値も大きい。しかし、石川橋はその下のお堀り通りの拡幅工事にともない残念なことに平成5年11月に取り壊されることになった。石川橋の建設当時の材料(コンクリート、鉄筋)、施工方法および構造形式の詳細は不明であるが、写真−1に示す建設時の工事写真が1枚残されており、この写真からは主鉄筋を2層に配置した鉄筋コンクリート造のアーチ橋であることを知ることができる。今回の解体調査では、石川橋の現況を正確に記録することを第一の目的としたが、自然環境下における鉄筋コンクリート構造物の耐久牲の問題に関連して、長い年月が経過したコンクリートの性質と鉄筋の腐食状況にとくに注目しており、材料、施工法および構造形式の全般にわたる詳細な調査を実施した。 本調査は、平成5年度および8年度の2年間に渡って実施する予定であり、本文では平成5年度に実施したコンクリートの非破壊検査、コンクリートコアの力学的試験、および鉄筋の腐食状況などの調査結果について報告する。 8.まとめ 石川橋の解体調査より、明治44年に建設された石川橋において使用された材料(コンクリート、鉄筋)の特徴、構造形式および配筋状態の詳細を明らかにすることかできた。また、80数年が経過したコンクリートの劣化状況の調査より、コンクリートの劣化および変質には水が大きく関与していることが確認できた。すなわち、長期間に渡って乾操状態に置かれたクラウン部ではコンクリートの変質はほとんど見られなかったのに対して、橋台部ではひびわれや空隙を通じて降雨や地下水の影響を受けた部分のみが変質していた。コンクリートの変質部では、モルタルと粗骨材との付着力が大きく低下しており、このため変質部では圧縮強度および静弾性係数が健全部と比較してかなり小さくなっていた。鉄筋腐食に関しては、塩分の影響は見られなかったが、乾燥状態に置かれたクラウンの下部でコンクリートの中性化が最も進んでおり、この部分では中性化のフロントが下層の主鉄筋にまで達していた。しかし、クラウン部全体において、内部の鉄筋の腐食は非常に軽微であり、局部的な腐食の進行および断面欠損をともなう重大な鉄筋腐食は認められなかった。 今回の調査では、鉄筋コンクリート構造物の耐久性の問題に関連して、コンクリートの劣化および変質に及ぼす水の影響や、鉄筋の腐食に及ぼす化学成分や製造方法の影響など興味深い問題か提起されている。前者については、コンクリートの鉱物組成や微細組織の変化についての検討を始めており、後者については川崎製鐵(株)鋼構造研究所の協力で鉄筋の力学的試験(降伏強度、伸び率)および鉄筋および錆の化学組成についての分析を行っている。 |
PDFファイル名 | 016-01-1163.pdf |