種別 論文
主題 コンクリートの直接引張強度に関する寸法効果の破壊力学的研究
副題
筆頭著者 上田稔(中部電力)
連名者1 佐藤正俊(中部電力)
連名者2 長谷部宣男(名古屋工業大学)
連名者3 奥田宏明(中部電力)
連名者4
連名者5
キーワード
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先頭ページ 69
末尾ページ 74
年度 1994
要旨 1.まえがき
コンクリートの強度には、供試体の寸法が大きくなると強度が小さくなる、いわゆる寸法効果が存在することはよく知られている。本研究は、コンクリートの破壊や強度に関して基礎的かつ重要なプレーンコンクリートの一軸引張荷重下における強度である、直接引張強度の寸法効果について研究する。直接引張強度の寸法効果に関する実験結果の例は極めて少なく、文献[2]〜[4]が見当たる程度である。いづれも供試体断面寸法が大きくなる程強度が低下する結果が得られている。割裂引張強度の寸法効果の実験結果では、ある直径以上では強度が一定値に収束する、またはある直径から強度が逆に増大する傾向が見受けられる。しかし直接引張強度に対しては、このような結果は得られていない。これは[2]は、コンクリートの最大粗骨材粒径(以下Gmaxと略す)30mmに比べて、円柱形の供試体直径(以下φと略す)が5〜15cmとその範囲が狭いことが考えられ、[3][4]は2種類の供試体に対してしか試験が行われていない。また[2]の結果は寸法による強度の差が1割以下の範囲で、[3][4]の結果に比べて寸法効果の程度が小さい。以上既往の直接引張強度の寸法効果に関する試験を勘案して、本研究ではGmaxを20mmと小さくする一方、円柱形の供試体直径をφ40cmまでの4種類として直接引張試験を行う。
直接引張試験には、供試体断面の大小による応力分布の差異はなく、一様な応力状態である。この点からも、コンクリートを均質体とみなしての平均応力的な取り扱いでの寸法効果の説明は困難なものと思われる。また供試体内の内部欠陥の多少や、乾燥収縮、水和熱などが寸法効果の理由として上げられたりするが、まず強度がいかに決定されているかを把握した上で、寸法効果の理由や様々な要因の寸法効果への影響を考察すべきと考える。著者らは、コンクリートを粗骨材とモルタルの複合体としてとらえ、一軸引張荷重下における破壊メカニズムを破壊力学的に考察した。ここで破壊力学的とは、コンクリートの内部破壊を破壊面の応力特異牲値と破壊靭性値を念頭に考えるという意味である。本研究では、この破壊メカニズムに基づき、コンクリートの直接引張強度を破壊力学的にとらえた上で、寸法効果の理由とそれに関する特性について直接引張試験結果をもとに理論的に考察する。
5.結論
(1)直接引張強度の寸法効果について、供試体が大きくなる程強度が低下するとともに、強度が収束する供試体寸法が存在すること、供試体寸法が小さい程強度のばらつきが大きいことを実験結果として示した。
(2)粗骨材とモルタルの複合体としてのコンクリートの破壊メカニズムに基づき、直接引張強度を破壊力学的に考察した。直接引張強度は、粗骨材に到達したクラック先端の応力特異性値が、粗骨材の破壊靭性値に達する瞬間の応力度である。そのときの応力特異性値の大きさは、粗骨材界面はく離やモルタルクラックの干渉によって決められる。したがって引張強度の寸法効果は、断面の大小による断面内の内部破壊域の多少がそれらの干渉により、応力特異性値の大きさに差をもたらすために生じる。
(3)強度が収束する供試体断面寸法が存在するのは、クラック先端の応力特異性値に影響を及ぼす干渉の範囲が存在するからである。
(4)供試体断面寸法が小さい程、強度のばらつきが大きい。この理由は、供試体断面寸法が小さい程、少ない内部破壊域の干渉によってクラック先端の応力特異性値が粗骨材の破壊靭性値に達するため、内部破壊状況のばらつきの影響が大きくなるためである。
PDFファイル名 016-01-2010.pdf


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