種別 論文
主題 曲げ降伏領域に機械式鉄筋継手を設けた梁の曲げ降伏後の力学特性
副題
筆頭著者 大久保全陸(九州芸術工科大学)
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連名者5
キーワード
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先頭ページ 289
末尾ページ 294
年度 1994
要旨 1.序論
機械式鉄筋継手の普及に伴って、RC構造の耐震性状を検討するために、その継手を用いた部材実験が活発に行われている。既往の実験によると、機械式鉄筋継手を用いても、部材の力学的特性、特に強度特性はほとんど問題はないものの、継手を部材の曲げ降伏危険断面に配置すると、引張鉄筋降伏による曲げ降伏後の荷重上昇が継手の無い場合に比べて比較的顕著となる場合がある、との指摘がある。
この荷重上昇は、部材の曲げ耐力の増加という観点からはそれ自身問題ではないが、近年の耐震設計方法の理念の一つである、設定した曲げ降伏機構の実現と曲げ降伏後の部材の靭性確保という2つの観点からは、降伏後の曲げ強度の上昇は単なる余力ではなく、それに見合った部材のせん断設計(靭性設計)の必要性と、非降伏部材の曲げ及びせん断強度の保証が要求されることとなり、荷重上昇の可能性についてはこれを定量的に明らかにしなければならない問題点となる。この荷重上昇は、機械式鉄筋継手単体の引張試験で伸びを測定する検長を短くしたときに得られる荷重と伸びの関係のグラフでみられるように、鉄筋単一の引張試験で得られる応力歪曲線に比べて、歪硬化による荷重上昇が早期に起こる(降伏棚長さが見かけ上短くなる)ことに起因する現象である。すなわち、降伏点強度と剛性が異なる二つの材料(鉄筋と継手金物)が直列に結合された、見かけ上、降伏棚長さが短くなった複合バネが部材の曲げ降伏領域(ヒンジ領域)に設けられると、部材変形の増加に伴って伸張するバネが降伏棚を超えて応力度上昇域に達することによって、部材としての荷重上昇が起こる現象である、と考えることができる。従って、そのバネの挙動は部材の変形量と密接に関係するので、荷重上昇割合は部材の変形との関係で論じられるべきものである。
本報告では、RCフレーム構造の耐震設計において曲げ降伏ヒンジが計画される梁端に機械式鉄筋継手を設けた場合の曲げ降伏後の荷重上昇のメカニズムの解明を目的として行った実験について上記の複合バネに基づく仮説を充てはめて検討する。
6.結び
機械式鉄筋継手を梁端近傍に設けた場合の曲げ降伏後の荷重上昇について解析し、実験結果と比較検討した。梁端に接して継手を設けても、降伏時の変形に関しては、その影響は少ないが、降伏後の荷重上昇は無視し得なくなる。
本解析により曲げ降伏後の挙動を概ねとらえることができたが、RC部材の曲げ降伏後の挙動は、鉄筋の定着状況、軸力の有無、加力方法(単調載荷か繰返し荷重か)等によっても異なる。本報告では、荷重上昇のメカニズムに関する基本的性状を理解するために片持ち梁の梁端に機械式鉄筋継手を設けた試験体について一方向単調載荷による実験を行った。梁が連続する内部接合部の場合や軸力がある場合(柱)や繰返し荷重の場合には、降伏後の荷重上昇は本論の場合より小さくなることも予想される。それらについては、引き続き検討する予定である。
しかしながら、本論で対象とする荷重上昇は、ヒンジ部材のせん断設計や靭性設計、及び非ヒンジ部材の曲げ及びせん断設計において考慮する事項であるので、設計では過小評価とならないような注意が必要である。
PDFファイル名 016-01-2047.pdf


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