要旨 |
コンクリートの組成形式には、セメントの水和反応等の化学反応や混和剤の吸着等の複雑な物理化学的な現象が関連し、基本的には主に、それらによってコンクリートの物性は決定される。このような複雑な物理化学的現象をモデル化し、解析することは、例えばセメント硬化体の強度や耐久性等を定量化する上で有用な方法である。また、セメントコンクリート系材料の新たな材料設計手法となり得る可能性もある。そこで、日本コンクリート工学協会では、1994年より「反応モデル解析研究委員会」を設置し、以下の課題について、3つのワーキンググループで活動を行ってきた。1)水和ワーキング:セメントの水和反応により生じたセメント硬化体は内部の組織変化を定量化するために、セメントの水和反応をモデル化し、微細組織形成との関連を明らかにしていくことが必要である。本WGでは、水和反応のモデル化に必要な基礎的知見の整理と検討を行った。セメントの水和反応速度や機構および水和反応と硬化体組織との関連について既往の研究を整理し、モデル化に利用可能な反応速度式や反応機構などをまとめ、水和反応モデルについての調査研究を行った。また、統一可能な物性値と諸定数についても、従来の報告をまとめ、併せて共通実験も実施した。2)強度ワーキング:セメント硬化体の組織、構造と強度との関係については多くの研究がなされている。本WGでは、細孔構造との観点から、これらを総合的に整理し、さらに硬化体の破壊現象に関する数理解析的なアプローチについて調査研究を行った。3)物質移動ワーキング:コンクリート構造物の劣化現象は、主にコンクリートにおける物質移動現象と関連している。本WGではコンクリートの耐久性に関する既往の研究を、水和反応による硬化体の組織変化や硬化後のセメント硬化体における物質移動現象に着目し、新たな観点より研究の現状を整理した。また、これらを基に、物質移動現象の定式化、硬化体の組織と物質移動現象の関係や物質移動に及ぼす反応の影響などを調査研究した。これらの研究成果については1996年5月14日に「セメントコンクリートの反応モデル解析に関するシンポジウム」を開催し報告した[1]。ここでは、各ワーキンググループの活動成果についてその概要を報告する。 |