要旨 |
平成7年1月17日午前5時46分頃に発生した淡路島の北端付近に震源をもち、マグニチュードが7.2の兵庫県南部地震は、高速道路および鉄道の高架橋や建築構造物の倒壊・崩壊をはじめ、土木・建築構造物に多大な被害を与えた。また、死者6425人、行方不明2人、重軽傷者43772人、住宅の全半壊・一部損壊478581棟、停電約260万戸、断水約130万戸に上る戦後最悪の大震災となった。この地震は、高度の都市機能が集積する近代都市が受けた直下型地震として事実上わが国で初めての経験であること、神戸海洋気象台で観測された地震波による応答スペクトルは従来の耐震設計において想定している規模を大きく上回ったこと、神戸市および淡路島の一部で震度7が記録されたことなど、従来の経験の範囲を超えるものであった。日本コンクリート工学協会では地震後に開催された最初の理事会において、この大震災から多くの教訓を学びとり、今後のコンクリート構造物に関する耐震技術の向上に貢献することを目的として、「兵庫県南部地震に関する耐震技術特別研究委員会」の設置を決めた。委員会の構成は、土木、建築、セメント、生コンクリートなど、コンクリートに関連する各分野をまたがるものとした。委員会ではまず、コンクリート構造物に関する被害の概要と検討すべき課題について議論を行った後、委員会の活動方針を定めたが、本協会は独自の設計基準を持っていないことから、設計基準に関する被害の分析については土木学会、日本建築学会、その他の関連機関の検討の推移を見守ることとし、土木、建築その他をまたぐ耐震技術の考え方や手法を中心に検討を行うこととした。そして具体的な検討は、1)材料施工、2)構造設計、3)補修補強診断、の3つの小委員会(WG)を設けて実施した。その成果は約450ページからなる報告書にまとめられた。また、震災後に各研究機関で行われたコンクリート系構造物の耐震技術に関する研究の成果を論文・報告として公募を行い、論文報告集を出版するとともに、シンポジウムを開催して上記の論文報告集および委員会報告書の発表と討議の場とした。 |