種別 論文
主題 海砂を用いたコンクリート中の塩分の移動
副題
筆頭著者 岸谷孝一(東京大学工学部)
連名者1 樫野紀元(建設省建築研
連名者2
連名者3
連名者4
連名者5
キーワード
2
先頭ページ 1
末尾ページ 4
年度 1980
要旨 1 塩分を含む鉄筋コンクリートの耐久性
 海砂使用鉄筋コンクリートの耐久性に対するもっとも大きな要因は、言うまでもなく海砂に含まれる塩分による内部鉄筋の腐食である。コンクリート中に塩分が存在しても、作り方によっては内部鉄筋が腐食しない構造物をつくることが可能であると考えられている1)〜8)。この場合、まず混入塩分量、水セメント比、かぶり厚さが最初に考慮すべき問題であるとされている。塩分量については、その上限をGLCなどでは0.1%、オランダでは0.08%(いずれも細骨材に対するNaCl量)、DINでは0.1%(同Cl量)などと決めている1)。これらは主として水酸化カルシウム飽和水溶液による試験を基にして決められたものである1)。コンクリート中では0.04%(細骨材に対するNaCl量;以下同)以下ならばまず耐久性に期待できようとする報告が多い4)9)1)。また水セメント比は50%以下であればまず問題なし、55%位が耐久性上の限界、60%以上では耐久性に期待できない場合が多い、と言われている12)〜15)。一方、内部鉄筋を腐食させないコンクリートのかぶり厚さについては、塩分を含む場合は、3〜13cmと非常にばらついている4)10)11)16)17)。このように、塩分を含む鉄筋コンクリートの耐久性に関しては、許容混入塩分量や推奨水セメント比についての見解は各報告共に概ね一致しているようであるが、かぶり厚さについては大変ばらつきが大きい。これらは、いずれも内部鉄筋が腐食する限界を対象として検討された結果に基づいたものと考えてよいだろう。一般に、鉄筋腐食の観点から耐久性について論ずる場合は、まず、鉄筋が腐食科学的にみて進行性と考えられる腐食形態に腐食する限界を把握することが重要であると思われる。通常は、一度腐食を生じると、その鉄筋の腐食量は、海砂使用によりもたらされる程度の塩分量の範囲では、塩分混入量が増す程腐食量が増加するものと単に考えてよいと思われる19)20)。問題は、進行性の腐食が生じる条件を把握することである。さて、塩分を含む場合、鉄筋保護機能に期待できるかぶり厚さは3cm位あれば良いとする報告もあれば、13cmは必要であるとする報告もあり大変ばらついている。このようにかぶり厚さの推奨値が大きくばらついているのは、それぞれの報告の基となっている実験条件に相違があることが原因していることもあろうが、とりもなおさず、コンクリート表面からの塩分濃度に差があることがこれらから示唆されるように思われる。一般に、塩分が混入される場合は、コンクリート打設後、強制乾燥の場合24時間で、自然乾燥の場合約2週間で混入塩化物がセメントクリンカー中の鉱物と結合すると言われている10)11)12)。(塩化物濃度が1gCl/100mlまでの場合トリカルシウムアルミネート、アルミノフェライトと結合しフリーデル氏塩C3A・3CaCl2・H32と思われる塩化物を生成する1)。この時、乾燥に伴い、コンクリート表面近くへ塩分が移動することが確認されている。コンクリート表面からの塩分濃度に差があるとすれば、このコンクリート硬化時の塩分の移動挙動が大きく影響しているものと考えられる。さて、筆者らの調査では、塩分を含む場合必ずしもかぶり厚さが少ない程鉄筋腐食量が多くなる傾向を示すとは限らないこと、表面から30mm位の部分の鉄筋が20mm位の部分にある鉄筋よりも進行性の形態に腐食する例が多く腐食量も多いことなどが分った。この点について詳細に確認するため、筆者らが実地した実験ならびに既存の海砂使用建物における調査の結果等を以下に印し、検討する。
4 むすび
 図4に実験および実態調査から得られるコンクリート表面からの塩分勾配の傾向を総合し、パターン化して示す。コンクリート中にある程度の塩分が含まれる場合、通常の建物の柱・はり等の部材においては、コンクリート表面から30mm付近へ40〜50mm付近にある塩分が移動し、この部分の濃度が非常に高くなる傾向がみられる。この時表面から50〜60mm以深では当初混入量と同程度の塩分が存在する。柱・はり等の主構造部材では、鉄筋がコンクリート表面から30mm付近に位置する設計とする場合が多いが、塩分を多く含むコンクリート中では、丁度この位置で塩分量が最大となるので腐食の危険が大きいものとなることがこれにより明らかとなった。海砂使用等により塩分がコンクリートに混入される恐れがある場合は、鉄筋の防食対策を種々講ずることは当然必要であるが、特にかぶり厚さを40〜50mmとすることが耐久性上有利となることがこれにより推察されよう。しかるに、何故塩分勾配が構成されるのであろうか、今後更に化学的考察等を加え検討する事項は多い。
PDFファイル名 002-01-0001.pdf


検索結果へ戻る】 【検索画面へ戻る