種別 論文
主題 まだ囲まらないコンクリートの塩酸溶解溶液の比重測定による水セメント比の推定
副題
筆頭著者 椎名国雄(東海大学)
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キーワード
2
先頭ページ 173
末尾ページ 176
年度 1980
要旨 1.はじめに
 まだ固まらないコンクリートの水セメント比を現場で簡易に測定する方法として、コンクリートからふるい分けたモルタルを一定量の水で希釈し、これに塩酸を混合したときの塩酸溶解液の比重から試料モルタル中のセメント量を推定することが可能である。コンクリートの水セメント比を推定するためには、セメント量のほか水量を求める必要がある。塩酸溶解溶液の比重測定による場合、試料モルタルの体積を500mlのメスフラスコを用いて予め測定しておき、セメントおよび砂の比重を既知として試料モルタルの体積からセメントの体積を差引いた値が水と砂の合計の体積であり、試料モルタルの重量からセメント重量を差引いた値が水と砂の合計の重量であるとして水量を求めた。求めた水セメント比を神田衛氏の考案された塩酸溶解熱方法による値と比較した。まだ固まらないコンクリートのセメント量または水セメント比を測定する方法として、古くは水野俊一氏1)および常山源太郎氏2)らによる比重計方法が知られている。また水セメント比を精度よく求める方法としては、神田衛氏3)の塩酸溶解熱方法が知られており、この方法は器具が市販されているので工事現場やコンクリート二次製品工場コンクリートの管理に広く使用されていると聞く。ここで述べる塩酸溶液の比重測定による水セメント比の測定は、両者の方法を併用したやり方ともいえる。ただし、水量を算定するために試料モルタル約200mlについて、砂の表乾比重を判定する方法に準じて体積を求める点は両者と異なる。試料モルタルについてその体積を求めることとしたのは、塩酸溶解熱方法が試料モルタルの水中重量を測定するのに比べれば、簡易な器具で水量が求められると考えたためである。一方、比重計方法では、ポーメ比重計を用いて一定量の試料モルタル(例えば500g)を1000mlの水で希釈してその混合液の比重を測定するのであるが、混合液中のセメントは時間の経過とともに沈降するので、比重測定にやや難がある。しかし塩酸溶解溶液についてその比重を測定するのであれば、セメントは溶解されており、時間の経過に伴う比重の変化は無視することができる。このようにして求めたセメント量および水セメント比を、塩酸溶解熱方法によるそれらと比較して示す。
3.測定結果および考察
 シリーズ1において塩酸溶解熱方法および比重計方法により求めた試料のセメント量および水セメント比を表−1および表−2に示す。比重計方法では塩酸投入後の希釈モルタル反応液を容器に入れたままおよそ30℃になるまで水中で冷やす。冷却に20分余力要す。なお30℃より多少の高低がある場合、比重の補正を0.00027/℃とした。溶解熱方法で求めたセメント量は、15例中9例までが計画値に対して±1gの範囲に測定値が入る。これに対し比重計方法で求めたセメント量は13例中4例しか測定値が計画値の±1gの範囲に入らない。一方、水セメント比は溶解熱方法で15例中14例が計画上の水セメント比との差が±2%の範囲に入り、比重計方法も13例中12例が±2%の水セメント比の差の中に入る。表−3、表−4はシリーズ2について塩酸溶解熱方法および比重計方法により求めたセメント量および水セメント比の値である。シリーズ2では反応液に等量の水道水を加えてうすめ液とし冷却時間の短縮を図ったほか、ルシャテリエ比重ビンの代りにポーメ比重針を用いて直接うすめ液の比重を測定するなど操作の簡易化を図った。しかしこの結果、反応液の比重から求めたセメント量は計画値に対して±1g以内に入るものが15例中5例となり、溶解熱方法で求めたそれが15例中13例であるのと比べるとかなり少なかった。水セメント比は比重計方法で求めたものが15例中14例、溶解熱方法で求めたものは15例中15例とも±2%の範囲に入った。試料モルタルの水量を求めるために、メスフラスコを用いてモルタルの体積を測定したことは、モルタルの水中重量測定値から求めるシリーズ1に比べて遜色ないことが分った。なおシリーズ2において反応液をうすめないで冷却するのを待ち、比重1.120〜1.180の測定範囲を有するポーメ比重計で反応液の比重を測定しセメント量を推定した結果は、うすめ液の場合よりもばらつきが少なかった。塩酸溶解溶液の比重からセメント量を求める方法は、溶解熱方法に比べて容器の断熱や塩酸没入後の時間にこだわる必要の少ない利点のある反面、貝がらや石灰石骨材の影響を受け易いといえよう。
PDFファイル名 002-01-0044.pdf


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