種別 論文
主題 RC部材引張部の剛性評価の方法に関する研究
副題
筆頭著者 堺孝司(北海道大学)
連名者1 角田与史雄(北海道大学)
連名者2 能町純雄(北海道大学)
連名者3
連名者4
連名者5
キーワード
2
先頭ページ 277
末尾ページ 280
年度 1980
要旨 1.まえがき
1964年、CEBによって鉄筋コンクリート(RC)設計施工国際指針が公表されて以来、その基幹をなす限界状態設計法の概念が世界各国の設計基準に採用されつつあり、我国においてもこの設計思想の導入による示方書改訂のための準備が着々と進められている。限界状態設計法では、終局限界および使用限界のあらゆる限界状態に対して設計構造の安全性の検討を行なう必要がある。この内、RC部材のたわみやひびわれなどの変形挙動は、使用限界状態の観点から検討すべきものであり、使用材料の高強度化に伴なって設計上その重要度が増してきた。RC部材のたわみやひびわれなどの変形挙動を理解するためには、部材の曲げ剛性の評価が重要となり、特に、ひびわれ発生後におけるコンクリートの引張抵抗を如何に見積るかがこの間題の要になると言えよう。RC部材の曲げ抵抗に寄与するこのコンクリート引張抵抗は、荷重レベルの変化に応じて質的にも量的にも変化するものである。即ち、ひびわれ発生前においては引張部コンクリートのすべてが引張抵抗として有効に働くが、ひびわれが十分発達した状態ではそれは鉄筋とコンクリートとの共同作用としての付着作用によるものとなり、またひびわれが十分発達していない段階ではコンクリートの残存引張抵抗と付着作用によるものとが共存している。しかし、コンクリートの引張応力分布形状は、ひびわれ位置およびひびわれ間あるいは荷重レベル毎に極めて複雑に変化するので、それらを厳密に分離評価することは困難である。従って、それらの実際的な評価にあたっては種々の工夫が必要となる。これまで、RC部材引張部における鉄筋とコンクリートとの付着の共同作用に関する基礎的な研究およびそれらの結果に基づいた種々のモデル化によるコンクリートの引張抵抗の評価に関する研究が数多く行なわれてきたが、RC部材引張部コンクリートの実用的な剛性評価の方法論上の分類をすれば、以下に述べる三つに大別することができよう:(方法I)−ひびわれ位置およびひびわれ間の場所によって異なるコンクリート引張応力分布の形状および大きさの平均化を図り、それを荷重レベルに応じて変化させる方法;(方法II)−ひびわれ位置およびひびわれ間の場所によって異なる引張鉄筋ひずみの平均化を図り、この鉄筋の平均ひずみの導入によってコンクリート引張抵抗を間接的に評価する方法であり、より具体的に言えば、ひびわれ断面における鉄筋応力と平均鉄筋ひずみとの相関関係を与える方法;(方法III)−引張部コンクリートの引張抵抗を独立して考慮せず、その他の曲げ抵抗を含めた状態で、曲げ剛性あるいはモーメント・曲率関係を直接与える方法。上述した三つのコンクリート引張抵抗の評価方法は、それぞれが特徴的な性質を有しており、また分類上同一範疇にあっても影響因子の考え方などの相違により異なった結果を生む場合があるかもしれない。本研究の目的は、これまで提案されてきた種々の方法の主なものをレヴューし、それぞれの特性を明確にすると共に、各々の方法の相互関係あるいは実験結果との適合性など、RC部材引張部の剛性評価方法の総合的な検討および評価を試みることである。
3.あとがき
 以上、RC部材引張部コンクリートの実用的な剛性評価の方法として大きく三つに分類し、これまで提案されてきた方法の主なものを簡単にレビューし、各々の相互関係を数値計算によって明らかにし、更に実験結果との比較を通してそれぞれの方法の評価を行なった。結論として、一部を除いてそれぞれの方法の間の差異はあまりないこと、著者らによるBranson式の拡張の結果としてすべての方法が曲げに加えて軸力を伴う場合にも通用できるようになったこと、曲率のみの計算であれば曲げ剛性を直接与える方法IIIが簡単であること、曲率計算の他にひびわれ幅の算定にも利用しようとすれば方法IIのような鉄筋の平均ひずみを直接与える方法がベターであること、などを挙げることができる。
PDFファイル名 002-01-0070.pdf


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