要旨 |
近年、コンクリートの収縮ひび割れ抑制が高耐久性確保の観点から益々重要な課題となってきており、再び膨張コンクリートへの期待が高まりつつある。膨張材は単にコンクリートの収縮を補償するのみならず、ひび割れ抵抗性を向上させ、ひび割れ幅も低減することが知られている。膨張材の添加量を増やしケミカルプレストレスを導入することによって、これらの効果は一層高まり構造性能も向上する。このように、膨張コンクリートは、収縮およびひび割れという耐久性上のコンクリートの弱点を抜本的に改善できる可能性を有した材料といえる。しかし、膨張コンクリートの効用は、配合条件・拘束条件・環境/養生条件に大きく依存するので、過去には現場施工において十分な効果が認められなかった事例もあり、二次製品用の特殊コンクリートとしてはその性能と効果に十分な認知を得ているものの、一般の構造物の信頼性向上に広範に活用されるまでには至っていなかった。膨張コンクリートの挙動の複雑さゆえに、ひび割れの発生抑制、ひび割れの低減、および温度応力の緩和などの膨張材の効果を、設計において定量的に評価する手法が十分には確立されていないことの影響も大きい。一方、膨張材の高性能化に関する研究は最近になって大きく進展し、高強度化や高流動化などの新たなコンクリート技術の展開に伴って膨張材の使用形態も多様になってきた。本研究委員会では、膨張材および膨張コンクリートの効用が構造物の高機能化/高耐久化に一層活かされるように、関連する知見の整理と技術の体系化を目的として、膨張機構・材料物性WG、構造挙動・部材特性WG、施工・ひび割れ対策検討WGを設置し、2001年度から2年間にわたって活動を行った。 |