種別 論文
主題 せん断補強鉄筋のない鉄筋コンクリートはりの疲労強度
副題
筆頭著者 上田多門(東京大学大学院)
連名者1 榎本松司(東京大学)
連名者2 SabryA.Farghaly(Assiut University)
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
3
先頭ページ 385
末尾ページ 388
年度 1981
要旨 1.はじめに
 従来,せん断補強鉄筋のない部材の繰返し荷重下のせん断破壊に関する論文は幾つか見受けられる。ChangとKesler1)せん断スパン比a/dが3.72である矩形ばり35本の疲労試験から図1を示し,はり終局強度は107回で静的載荷の場合の62%であるとしている。桧貝2)はa/d=2〜6.36である軽量コンクリート製矩形ばり20本の疲労試験結果を図2のようにまとめ,106回でせん断疲労強度は静的載荷の場合の約60%であるとしている。両者を比較してみると,共に静的なせん断耐力を実験的に求め,それと繰返し荷重の最大値との比を縦軸に,繰返し回教の対数を横軸にとった疲労強度図により整理している点は同様であるが,ChangとKeslerが縦軸の1.0を通らない曲線,桧貝が1.0を通る直線によって疲労強度を表現している点が異なっている。又,観察された破壊形式としては,ChangとKeslerが,(1)斜めひびわれ発生と同時に起こる破壊,(2)斜めひびわれ発生後のコンクリート圧縮部の疲労破壊による破壊,(3)最大曲げモーメント区間での引張鉄筋の疲労破断による破壊をあげ,桧貝が前述の(1)(2)と,(4)斜めひびわれ交差部での引張鉄筋の疲労破断による破壊を観察しており,整理しているデータの破壊形式でも一部異なっている。ChangとKeslerは観察された(1)と(2)の破壊形式の差異を考慮せずに,疲労強度の低減を単純に静的せん断耐力との比を用いて論じているが,桧貝は破壊形式によって静的せん断耐力を区別し,即ち(1)に対しては静的な斜め引張破壊耐力との比,(2)(4)に対しては,斜めひびわれ発生後アーチ的な抵抗機構を形成しているとして,静的なアーチ耐力との比を用いて検討している。その他,Taylor3)はa/d=4.11の矩形ばり14本の疲労試験から前述の(1)(2)の破壊形式をとらえ,106回で斜めひびわれが発生しない限界の最大荷重は,静的な斜めひびわれ発生荷重の約70%であり,疲労強度には繰返し荷重の最大値だけでなく,振幅も影響を与えていると結論している。StelsonとCernica4)はa/d=5.65の矩形ばり11本の疲労試験から(1)の破壊形式を観察し,斜め引張破壊耐力は5.0×106回で60〜65%に低減するとしている。なお,Taylor及びStelsonとCernicaは疲労強度曲線を与えるまでには至っていない。このように,幾つかの論文報告があるが,静的せん断耐力の算定方法,繰返し回数に伴う疲労強度の低減のし方,106〜107回繰返し時の疲労強度の静的せん断耐力との比などが様々に異なった結論が見られる。又,根本的にメカニズムの異なるコンクリートの疲労破壊による破壊と引張鉄筋の疲労破断による破壊とを区別することなく同一の疲労強度曲線として整理するという非合理な点も見受けられる。そこで我々は,矩形ばり28本の疲労試験を行うとともに,これら全ての実験結果を,破壊形式の差異を合理的に考慮しながら,システマティックに整理して,せん断補強鉄筋のない部材の疲労強度曲線を定式化することを試みたのである。
4.結論
(1)a/d≧2.5の場合では、式(2)で示される疲労強度式により、繰返し荷重下のコンクリートの疲労破壊によるせん断疲労強度を概ね推定できる。しかし、荷重振幅の疲労強度に与える影響を考慮すれば、さらにその精度が向上するものと考えられ、検討していく必要がある。なお、引張鉄筋の斜めひびわれ交差部での疲労破断による破壊は起こりにくいと考えられる。(2)a/d<2.5の場合では、コンクリートの疲労破壊によるせん断疲労強度は、a/d≧2.5の場合の破壊のメカニズムが異なるためか、式(2)で求まる疲労強度より強く、この式を適用するには問題があると考えられ、新たに疲労強度式を定式化する必要があろう。コンクリートの疲労破壊による破壊が起こりにくくなる反面、引張鉄筋の斜めひびわれ交差部での疲労破断による破壊が起こり易く、この疲労強度も明らかにしなくてはならない。
PDFファイル名 003-01-0097.pdf


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