種別 論文
主題 DCB法によるコンクリート材料破壊じん性評価に関する基礎的研究
副題
筆頭著者 和泉正哲(東北大学工学部)
連名者1 三橋博三(東北大学工学部)
連名者2 野村希晶(東北大学工学部)
連名者3 海老沢弘道(東北大学工学部)
連名者4  
連名者5  
キーワード
5
先頭ページ 125
末尾ページ 128
年度 1983
要旨 はじめに
近年コンクリート材料の破壊特性を合理的に評価する方法の一つとして、或いは鉄筋コンクリート構造物の非線形挙動をシミュレートするコンピュータ数値実験におけるクラック進展のクライテリオンとして.破壊力学手法の適用に関する研究の重用性が指摘されている。しかしながら、コンクリート材料は高度に非均質な内部構造の為に、その力学的特性或いは破壊過程特性を捉える事は容易ではない。1961年にKaplanによって破壊力学手法のコンクリート材料への適用が初めて試みられて以来、数多くの研究がなされてきた。その結果、破壊じん性値Kc等破壊力学パラメータ限界値には、供試体の寸法と幾何学的形状、セメントやモルタルの質、空気含有量、養生条件、水セメント比、骨材の種類・大きさ・量、荷重のかけ方、含水率、材令、実験温度等が影響を及ぼす事がほぼ明らかとなった。3)しかしながら、色々な研究者によりて実験的に得られた破壊力学パラメータ限界値は大巾なバラツキを示している。4)このバラツキは、脆性的なクラック伝播に先立つクラック先端の安定な微細クラックの長さ或いはmicroicracking zoneの大きさを考慮していない事に遠因している。従って、破壊力学パラメータは本来の材料特性値になってはいない。この事は、J積分やR曲線など非線形破壊力挙手法を導入しても問題が解決されない事を意味している。また、クラックの曲がりくねりや骨材のinterlock現象等クラック面の粗さによるクラック両面の相互作用が生じる為に、compliance法の適用はこの微細クラック長さの評価には不適である。更に、microcracking zoneではある程度のカの伝播がなされる為に、acoustic emission(以下AE)法による破壊位置評定でクラック長さを評価するのは難しい。従って、コンクリート材料に適した破壊力学パラメータ限界値評価方法を確立し、非均質な内部構造とこれらのパラメータとの関係を明らかにする事が当面の重要な課題である。
以上述べたような問題を解決するために、本論文ではクラック長さ方向に梁せいが変化するDouble Cantilever Beam(以下DCB)を用いて、かりに微細安定クラックが生じてもクラック長さに関係無しに破壊じん性値を評価てきる試験法(変断面型DCB試験法)を提案する。クラック長さに無関係に破壊じん性値を評価てさる方法としては、この他にDouble Torsion Testやクラック長さ方向にウェブ幅が変化するDCB法がある。しかしこれらをコンクリートに適用しようとした場合には、極めて大きな供試体を必要とする事、また後者ではクラック進展途中で梁が折損しやすい等の問題があり、5)新たな方法が求められているのが現状である。
結語
コンクリート材料は極めて非均質であるために、その破壊挙動を評価するのには破壊力学手法を導入すると、巨視的クラックの脆性伝播に先立って生じる安定な微細クラックの存在が大きな困難を引き起こす。この問題を解決するために本論文ではクラック長さとともに梁せいの変化するDCB試験体の使用を提案し、若干の実験結果を示した。
この方法を用いれば。クラック長さに無関係にエネルギ−解放率を評価することができ、コンクリートの破壊力学パラメータ限界値に及ぼす内部構造の影響などを統一的に議論する事が可能になろう。荷重がその最大値に達するまでになした仕事量Wcは、詳細な破壊過程あるいは破壊機構を表現するには不適であるが、逆にクラック面形成以外のエネルギ散逸をも含めた破壊に要するエネルギを示すパラメータになることが期待される。また、クラック先端開口変位あるいはAE信号の累積エネルギなど、コンクリート材料の非線形破壊力学を表現しうるパラメータ導入の可能性を検討する方法としてもDCB法は極めて有効な試験法と考えられる。
PDFファイル名 005-01-0032.pdf


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