種別 論文
主題 スリップ破壊が先行する1スパン1層耐震壁を単位耐震壁とする均等多連耐震壁の破壊機構に関する研究
副題
筆頭著者 江崎文也(九州大学工学部)
連名者1 富井政英(九州大学工学部)
連名者2 藤田正則(九州大学大学院)
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 713
末尾ページ 716
年度 1984
要旨 1.序
 耐震壁は主に鉛直荷重を支持する付帯柱と水平力を負担する壁板から構成されているため、せん断破壊を起こしてもその破壊が壁板のスリップ破壊のみにとどまるように断面設計されていれば、損傷を受けていない付帯柱によってなお鉛直荷重を支持することかできる。ゆえに、耐震壁に関しては単独柱の場合に要求されている曲げ破壊先行の設計をする必要は必ずしもない。また、強地震の頻度が多い日本の鉄筋コンクリート造建築物は、高さが低く平面の大きい横長の形状のものが多いため、せん断実験では曲げ破壊を起こす連層耐震壁でも、建築物に組み込まれると周囲の構造物によって曲げ変形が拘束され、せん断破壊を起こす可能性が大きい。このことは、過去の震害でも耐震壁の水平断面が曲げ破壊を起こした例がみられないことからも十分予想される。以上のことを考慮すると、せん断破壊を起こす恐れがある場合には、せん断破壊後も鉛直荷重を支持でき、震害後の補修も容易な耐震壁となるように、壁板かスリップ破壊を起こす断面設計を行なう必要がある。このような耐震壁の破壊時の層間変形角は、曲げ破壊する場合に比べて小さくなり、2次部材の被害を少なくすることかできる。
 筆者は多くのせん断実験資料がある1スパン1層耐震壁(以後、単独耐震璧と呼ぶ)に関し、壁板のスリップ破壊によって支配される水平耐力Quo(ws)および付帯ラーメンのせん断破壊によって支配される水平耐力を、それぞれ精度よく算定できる2つの半理論式を提案している。また、これらの式を使ってせん断破壊形式を判別する方法も提案している(図-1参照)。しかし、鉛直または水平に連なる多連耐震壁に対してもこの方法が適用できるかどうかについてはまだ不明であった。
 そこで、本論では、多連耐震壁に対してもその各単位耐震壁が「隣接壁板の境界応力の作用しない単独耐震壁に関して求めた壁板のスリップ破壊先行の条件の(1)式」を満足すれば、耐震壁のせん断破壊は壁板のスリップ破壊となることを多くの実験によって実証したものである。
4.結論
 隣接壁板の境界応力の作用しない1スパン1層耐震壁に関する「壁板のスリップ破壊先行の条件」の限界近くを満足するように設計した多連耐震壁15体のせん断実験の結果、いずれも壁板のスリップ破壊が先行し、安全なせん断破壊を起こした。ゆえに、隣接壁板の境界応力の作用する多連耐震壁についても、この「条件」を満足するように断面を設計すれば、壁板のスリップ破壊が先行する耐震壁となることが明らかになった。
PDFファイル名 006-01-0179.pdf


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