種別 論文
主題 鉄筋コンクリート建物の塩分蓄積に関する一考察
副題
筆頭著者 川上英男(福井大学工学部)
連名者1  
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
7
1
先頭ページ 81
末尾ページ 84
年度 1985
要旨 1.まえがき
 塩分環境下にある鉄筋コンクリートでは、コンクリートに外部より浸透した塩分が鋼材の腐食を招き、構造物の耐久性を著しく低下せしめる危険がある。建築物においても、海浜環境より浸透蓄積した塩分が、海砂使用の際の塩分恕限量に比べて格段に大きい場合が見られることは既に報告に見られる通りである。
 鉄筋コンクリート建築物では仕上げ材を有する場合が多いものの、鉄筋に対するコンクリートかぶりが小さいこと、また配筋の関係からコンクリート自体も水セメント比の比較的大きい、軟練りの調合を用いているなど、塩害に対しては元来不利な体質となっており、塩害対策は耐久性確保の上で極めて重要である。
 この種の塩害には、コンクリート中の塩分量、空気や水分の浸透、かぶり厚さなどが影響するが、塩分量に対象を限れば、鉄筋周辺の塩分量が問題となる。そして拡散理論によれば、任意点の塩分量は、時間(t)、コンクリートの表面塩分量(CO)及び塩素イオンの拡散係数(DC)によって表わされるとされる。
 本報告は鉄筋コンクリート建築物のコンクリート壁体内の塩分調査結果に対して、拡散理論にもとづく解を適用して、表面塩分量(CO)と拡散係数(DC)を算定し、その大よその範囲を明らかにすると共に、これらの値を用いた塩分分布線の調査結果に対する適合性ならびに、塩分量にもとづく建物耐用期間に対する考察を加えるものである。

5.むすび
 鉄筋コンクリート建築物(材齢28年、海岸より800m)の壁体コアの塩分調査結果に対して拡散理論による検討を行なった結果、限られた範囲ではあるが、次の結論が得られた。
1.建物の壁体コンクリート中の塩分に対しても拡散理論解がおおよそ適用できることが示された。
2.見掛けの拡散係数(DC)は屋外側では0.37〜1.66×10-8cm2/sec、平均0.74×10-8cm2/secと算定された。一方屋内側のDCは平均0.12×10-8cm2/secであって屋外側の約1/5の値であった。同一コア内でもより乾燥している方がDCは小さくなるものと考えられる。
3.DCの値はコンクリートの圧縮強度が大さい程、小さくなり、塩分の拡散に対する抵抗が大きくなる傾向を示した。
4.鉄筋付近の塩分量をある限度に押える観点から建物の許容耐用期間を検討するときに、コンクリートのセメント水比、あるいは圧縮強度がその期間の比較指標となる可能性が示唆された。
今後広範囲の調査結果の蓄積による検証が望まれる。
PDFファイル名 007-01-0021.pdf


検索結果へ戻る】 【検索画面へ戻る