種別 | 報告 |
主題 | スリップフォームによるコンクリート表面しゃ水壁の施工方法に関する実験結果 |
副題 | |
筆頭著者 | 松尾英夫(熊谷組技術研究所) |
連名者1 | 高田利行(熊谷組技術研究所) |
連名者2 | 佐藤英明(熊谷組技術研究所) |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 7 |
号 | 1 |
先頭ページ | 697 |
末尾ページ | 700 |
年度 | 1985 |
要旨 | 1.はじめに 近年、東南アジア等において、スリップフォームを用いて施工する新しいタイプのコンクリート表面しゃ水壁型ロックフィルダムの築造件数が増加している。ダムの構造は図1に示すとうりであるが、しゃ水壁の施工は長大斜面上での連続的舗設工作業となるので、用いるスリップフォームは自重のみでコンクリートの側圧に抵抗できる構造のもので、できるだけ軽量小型のものとする必要があり、施行速度(スリップフォームの斜面方向の平均上昇速度)はできるだけ速いことが望ましい。実施例によれば、スリップフォームの長さ(スクリード部分の斜め方向長さ)は1.1m〜1.8m、斜面方向の平均上昇速度は2〜3m/hr程度が採用されているので、コンクリートは締固め後30〜60分程度で脱型されていることになる。しかし、スリップフォームの所要重量の決定根拠、適切な締固め方法、コンクリートがまだ固まらない内に脱型されることによる影響などについては、理論的な報告は見当たらず、経験的に処置されているのが実情のようである。 施工中のスリップフォームの断面を図2に示すが、バイブレータの挿入位置とスリップフォームに作用する揚圧力の関係、スクリード直下部分の締固め度、脱型部分のはらみ出しの問題などに関する具体的データは発表されていない。スリップフォームの設計根拠を明確にし、合理的な施工を実施するには、これらの問題点を実験的に解明する必要があると考えられるので、以下に述べる諸実験を行なった。 4.まとめ (1)コンクリート表面しゃ水壁の施工に用いるスリップフォームに関しては、スクリードが長く、重量の重いものを使用する考え方と、スクリードが短く、軽量小型のものを使用する考え方とが存在しているようであるが、バイブレータの挿入位置、1層の打込み高さなどに制限を加えることにより、軽量小型のものでも充分使用できることか確かめられた。 (2)スクリードの長さが短い場合(例えば1.1m)脱型に伴うコンクリートのはらみ出しが相対的に大きくなり、施工精度はやや不安定となるが、スクリードの長さとはらみ出し量との関係は図8に示すとうり、スクリードの長い場合(例えば1.8m)でも、ある程度のはらみ出しはやはり発生する。はらみ出しの大きさが硬化コンクリートの品質に及ぼす影響については、今後充分検討する必要があるが、今回の実験における表面観察及びボーリングコアによれば、少なくとも目視可能なひびわれの発生等は認められなかった。 (3)スリップフォームの設計に用いるコンクリートの側圧は、図4に示すような分布形を採用すれば良いと思われる。ただし、現場打設実験の結果によれば、スクリード長さ1.1mの場合に対してはやや過少、スクリード長さ1.8mの場合に対してはやや過大な評価であったと思われる。なお、バイブレータをスリップフォームに極めて近接させて使用した場合には、図4に示す値より約50%程度圧力値が増加する(静、動とも)ことが観察されている。 (4)スクリード直下部分の打継ぎ面に欠損部分を生じないようにするには、打継ぎ時間間隔を出来るだけ短くすることの他、1層の打込み高さに制限を加えるべきであると思われる。(斜面勾配1:1.5の場合15cm程度)バイブレータをスクリードに近接させて使用する方法を採ればコンクリートの充填性は良くなるが、スリップフォームに作用する揚圧力は極めて大きくなるので、設備重量の増大が必要となるからである。 (5)コンクリートのスランプは、水密性が要求される構造物であるから、当初5cmを目標として実験を行なったが、7cm程度とした方が表面の仕上がりは良いようである。ただし、水量の多い配合のコンクリートを用いた場合には、脱型時にコンクリート内部のモルタル分(あるいはペースト分)が表面に噴出する現象が観察されたので、適正配合については今後充分検討する必要がある。 |
PDFファイル名 | 007-02-0175.pdf |