種別 論文
主題 北陸地方の環境試塩害危険度分布について
副題
筆頭著者 川上英男(福井大学)
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キーワード
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先頭ページ 81
末尾ページ 84
年度 1986
要旨 1.まえがき
 海岸付近の塩分環境下にある鉄筋コンクリートでは外部より浸透した塩分によって鉄筋が腐食するなどの被害を受けることがある。これを本報告では、海砂・混和剤の使用などに伴って最初からコンクリートに塩分が内在する場合と区別して環境塩害と呼ぶ。この種の損傷につちえは調査例が蓄積されてきているものの、環境塩害の実態解明には未知の部分が多く残ってされている。コンクリートの塩分浸透は仕上げ材・コンクリートの材質環境条件・経過変数によって影響を受ける事は勿論であるが、環境中の塩分濃度(表題では塩害危険度と表現した)が起因であることは言うをまたない。この塩分濃度の実態把握が塩害対策上重要な理由は次の点にある。
(1)環境塩害危険度の地域的区分設定の基本となること
(2)塩害対策として水セメント比、かぶり厚など耐久設計上の手がかりを与えること
 ところが、海塩粒子の発生や内陸部への飛来には気象条件、海象条件、海岸からの距離、地形など多くの要因が影響を及ぼすのでその実態を把握しにくい上、それがコンクリートへ浸透する現象は長期間にわたるため、実験を行っても結果を得るまでに時間がかかることなどもあって、塩分濃度の評価とその塩害対策への適用にはまだ多くの資料の蓄積を要する段階にある。
 本報告は、環境塩害の比較的多い日本海沿岸のうち北陸地方において、モルタル暴露試験片と松皮の塩分分析によって環境塩害分の調査を行った結果を報告し、若干の考察を加えるものである。
4.むすび
 北陸地方における環境塩分濃度の地域的分布を暴露モルタル試験片と松皮の塩分分析によって調査した結果の大要は次のようである。
(1)暴露したモルタル試験片に浸透蓄積した塩分量は海岸から内陸に向かうにつれ減少する。この塩分量は地域により、また暴露の時期・期間によって差がある。しかし、海岸より100m地点に対する各地の相対塩分量は2000m位階ではいずれの場合もISOによって提示された分布より大きく、塩害対策上危険側にあることを示した。塩害対策にはこのような地域的特徴を考慮する必要のあることが明らかとなった。
(2)松皮の塩分調査によって環境塩分濃度分布の実態を示唆する試料が得られた。その結果、海塩粒子飛来の著しい冬期の風向と海岸からの距離、地形などの環境塩分濃度に影響を及ぼす因子の地域的特長のいくつかが明らかとなった。
 また、冬期採取の松皮の塩分量は夏期のものに比べて格段に大きいこと、海岸からの距離と相対塩分量との関係では松皮は暴露モルタルにほぼ類似していることが示された。
 以上、我が国のように多彩な地形、海岸線、気象条件を有するところで、適確な鉄筋コンクリートの塩害対策を講ずるにはそれぞれの地域性をまず把握し、これを充分に配慮することが不可欠である。
PDFファイル名 008-01-0021.pdf


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