種別 論文
主題 コンクリート中の鋼材腐食における塩素イオンの限界量について
副題
筆頭著者 米澤敏男(竹中工務店)
連名者1 V. Ashworth(G.C.C.Ltd.)
連名者2 R.P.M. Proeter(U.M.I.S.T.)
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 141
末尾ページ 144
年度 1986
要旨 1.まえがき
 海岸近くに建設されるコンクリート構造物や海砂を使用したコンクリート構造物等では、外部から侵入する塩分あるいは、もともとコンクリート中に存在する塩分のために鉄筋が腐食することはよく知られており、これらの構造物の防食対策を確立することが強く望まれている。ただし、鉄筋の腐食は、コンクリート中に塩分が存在すれば必ず生ずるという性質のものではなく、鉄筋に対する強い保護作用を示している不動態を破壊し、腐食を開始させるためには、ある量の塩素イオンが必要である。また、不動態の破壊によって始まった腐食が著しく進展し、コンクリート構造物を劣化させるにいたるかどうかは、酸素供給の状態やコンクリートの抵抗等に依存する問題である。したがって、コンクリート中の塩素イオン量が増加し、鉄筋の腐食が始まることと、鉄筋の腐食が著しく進展し、構造物が劣化することとは、同一の問題ではない。「許容塩分量」という表現で一般に用いられる概念は、鉄筋の腐食環境との関連が必ずしも明確には定義されていないが、塩素イオンが不動態の破壊とコンクリートの抵抗の両方に及ぼす効果や、塩素イオンがセメント水和物によって固定される程度等、鉄筋腐食塩分との関連を総合的に考慮した概念であるとも考えられる。ただし、この「許容塩分量」も一般性のある値が存在するとは必ずしも言えないのが現状ではなかろうか。コンクリート中の鉄筋を腐食させる塩素イオシの限界量を腐食現象との関連で詳しく議論することが難しい理由の一つは、腐食に直接関与するコンクリート間隙水中の塩素イオンや水酸イオンを分析するのが困難なことにある。この研究は、電気化学的な測定と、高圧圧力容器によって抽出した間隙水を直接分析した結果から、コンクリート中の鉄筋の腐食が始まる限外状態の塩素イオン量について基礎的に検討したものである。
5.まとめ
 本研究の結果、(1)モルタル中の鋼が腐食し始める限界状態の[Cl-]/[OH-]比は、アルカリ水溶液中の場合よりも高く、モルタル中に埋設された鋼ではあっても、鋼とモルタルとの付着が良好な場合の方が、付着が損なわれている場合よりも高い、(2)このようにモルタル中の鋼が腐食し始める限界状態は、界面の状態に影響されるため、アルカリ水溶液中の場合のように、単純に間隙水中の[Cl-]/[OH-]比から限界状態を定めることはできない。等の点が明らかになった。これらの結果から、鉄筋の防食上、鉄筋とコンクリートの界面の性質を改善することの重要性が認識された。一方、現実的な観点から、最も安全な方法で腐食を開始させるCl-の限界量を定めるとすれば、それは水溶液中での限界状態を用いること、すなわち、コンクリート特有の防食作用をCl<}SUP>-の限界量に対する余裕に留めておくことであると考えられた。
PDFファイル名 008-01-0036.pdf


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