種別 論文
主題 60年間海洋環境下にあったコンクリートについて
副題
筆頭著者 尾崎訊(室蘭工業大学)
連名者1 松谷正憲(室蘭工業大学)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
8
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先頭ページ 197
末尾ページ 200
年度 1986
要旨 1.はじめに
 近年コンクリート構造物の劣化あるいは損傷が問題になり、多くの研究報告がなされているが、その中には長期にわたって使用された古いコンクリート構造物の健全度を調査した研究報告もある。これらの結果は、長期にわたる耐久性を知る上で重要な資料となるように思われる。
 本研究は、このような視点から、60年間海水環境下にあった室蘭港防波堤のコンクリートを入手できた機会に、コンクリートの強度や鉄筋の腐食状況を調べるとともに、配合推定、塩分含有量、中性化試験などを行って、長年の海洋環境における影響を調査した結果について発表する。
10.まとめ
 60年間海洋環境下にあったコンクリートを調査して得た結論は次の通りである。
(1)圧縮強度はケーソン部コンクリートが最も強く347kg/cm2、上部コンクリートが259kg/cm2、根固め方塊コンクリートが181kg/cm2であり、建設当時のブリケットによる引張強度から見ても、十分な強度を有していると思われる。
(2)配合推定による水セメント比はケーソン部コンクリートで73%、上部コンクリートで92%、根固め方塊コンクリートで94%と大きな値を示した。単位火山灰量を資料から試算するとケーソン部コンクリート27kg/m3(冬期施工14kg/m3)、上部コンクリート26kg/m3、根固め方塊67kg/m3となり、水結合材比でも、それぞれ64%(冬期68%)、81%、66%に過ぎず、小樽港の場合の水セメント比に比べ疑問がある。
(3)中性化は、貧配合の根固め方塊コンクリート以外は殆ど進行しておらず、火山灰の使用がポゾラン反応によるコンクリートの水密性の向上に効果があったことは、空隙の測定結果からもうかがわれ、コンクリートの劣化を抑制するのに役立ったと思われる。
(4)塩分含有量は、海洋飛沫帯の上部コンクリートで0.6%、根固め方塊コンクリートで0.5%と、コンクリートの表面部分では非常に大きく、ケーソン部コンクリートでも海水中では0.4%程度の値を示したが、表面から8cm以上中に入ったコンクリートの内部では0.1%程度の一定値に減少し、海水圧を受ける場合でも0.2%の一定値にとどまった。
(5)これらのコンクリートには、海砂が使われたらしいが、鉄筋の錆が殆ど進行しておらず、ひびわれが存在しないこのようなコンクリートでは、十分なかぶりがあれば、問題となるような腐食には至らないようである。
 以上のように、鉱さいセメントを用い、火山灰を使って造った60年前のコンクリートが、長い間海洋環境下にあったにも拘わらず、殆ど劣化していないことがわかった。
PDFファイル名 008-01-0050.pdf


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