種別 論文
主題 スランプ試験およびすベり抵抗試験によるフレッシュコンクリートのレオロジー定数の測定
副題
筆頭著者 谷川恭雄(三重大学)
連名者1 森博司(三重大学)
連名者2 筒井一仁(三重大学)
連名者3 黒川善幸(三重大学)
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 381
末尾ページ 384
年度 1986
要旨 1.まえがき
 スランプ試験は、フレッシュコンクリートのコンシステンシーを測定する試験方法の中で最も簡便で多用されている。しかし、近年、流動化コンクリート、繊維補強コンクリート、水中施工用コンクリートなどの実用化に伴い、従来のスランプ試験だけでは、施工時のコンクリートの流動・締固め特性を正確に予測することがきわめて困難な状況になっている。このため、レオロジーの観点に立ち、フレッシュコンクリートの流動性を統一的に評価する試みが数多くの研究者によって報告されている。これらのほとんどの報告では、回転粘度計、平行板プラストメータ、球引上げ粘度計などを用い、コンクリートのレオロジー定数の測定を行っているが、本来上記の各測定方法はコンクリートのレオロジー定数を測定する目的で開発されたものではなく、通常用いられる調合の範囲でさえ同一の測定装置ではカバーできない場合が多い。一方、スランプ試験は、少なくとも常用の建築用コンクリートであれば、測定範囲をカバーしうる試験方法であり、これらの現行試験法は、何らかの形でレオロジー性質を表現していることも事実である。コンクリートをレオロジー的に取り扱う場合、その流動特性の表現には時間項を含む「粘性」のパラメータが不可欠であり、スランプ試験が粘性の評価に適用されていない理由は、スランプ試験時に流動速度を無視し、流動が停止したときの形状(高さ)のみを測定の対象としているからである。
 筆者らは、現在常用されているスランプ試験を拡張して、コンクリートのスランピング速度、すなわちスランプコーン引上げ後の落下速度を測定し、理論解析による結果と比較することによって、フレッシュコンクリートのレオロジー定数を定量化する手法を既に報告した。しかし、スランピンク速度の測定には、多少大がかりな測定装置が必要であり、また、コンクリートのスランピンク速度はスランプコーンの引上げ速度に影響を受けるため、一定速度でコーンを引き上げる装置ならびに、引上げ速度を測定する機構が必要となる。このことは、スランプ試験の持つ簡便性を失うものであり、実用化の若干の障害になるものと思われる。
 一方、モルタルの代表的なコンシステンシー試験の一つであるフロー試験は、瞬間的な強制加速度を与えることによって試料を変形させるもので、時間項に関連するパラメータを検出できる。ただし、フロー試験の結果のみでは、2つのレオロジー定数、すなわち降伏値と塑性粘度を区別して定量化することはできない。
 以上のような理由から、本報告では、スランプ値およびフロー値の両方の値から、レオロジー定数を定量化する手法を提案する。この手法を適用するためには、粘塑性有限要素法解析による流動シミュレーションが必要であり、さらに解析には、試料と外部境界面との間のすべり抵抗力を入力する必要があるため、まず、すべり抵抗に関する実験を行って、解析に用いた。フレッシュコンクリートのすべり抵抗に関する資料は少なく、今後、型枠内や管内における流動を解析する場合の重要なデータとなるものと思われる。また、定量化したレオロジー定数の妥当性を調べるため、スランピング(sl.)−降下時間(t)曲線およびフロー値(fl.)−落下回数(n)曲線に関する解析結果と実測結果の比較を行った。
4.まとめ
 現行の代表的なコンシステンシー試験方法であるスランプ試験およびフロー試験の結果を用いて、フレッシュコンクリートやフレッシュモルタルのレオロジー定教(降伏値および塑性粘度)を推定するための以下のような手法を提案した。
1)スランピング(sl.)-降下時間(t)曲線の実測を行い、解析曲線と比較する方法。
2)フロー値(sl.)−落下回数(n)曲線を測定して、図−9よりレオロジー定数を推定する方法。
3)スランプ値とフロー値を併用して、図−10よりレオロジー定数を得る方法。
 以上の方法のうち、1)はコンクリートに適用できるという利点があるが、測定装置が多少大がかりなものとなる。2)はモルタル試料については最も簡便な方法であるが、誤差が若干大きい。3)の方法は、比較的制度が良く、試験方法も簡便であるが、フレッシュコンクリートに適用するためにはコンクリート用のフロー試験装置を開発する必要がある。
 また、これらの推定方法を用いる場合、試料と鉄板の間のすべり抵抗力を事前に測定する必要があるが、通常の調合の範囲であれば、本報告で用いたように一定値としてもさしつかえない。
PDFファイル名 008-01-0096.pdf


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