種別 | 報告 |
主題 | アルカリ骨材反応によって劣化した或る大規模集合住宅の調査 |
副題 | |
筆頭著者 | 小林一輔(東京大学) |
連名者1 | 星野富夫(東京大学) |
連名者2 | |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 8 |
号 | 0 |
先頭ページ | 857 |
末尾ページ | 860 |
年度 | 1986 |
要旨 | 1.まえがき アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化事例は、橋梁やダムなどの土木構造物に関して数多く報告されているが、建物に関するものは内外を通じて皆無に近い。今回、アルカリ骨材反応によって早期劣化を生じた大規模集合住宅(31棟、1000戸)の調査を実施する機会を得たので結果を報告する。なお、この集合住宅は埼玉県に建設された壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造5階建であって、外壁はセメントリシン仕上げ(妻壁はタイル打込み)、屋根は打放しコンクリートで継目部は液状アスファルト線防水を施している。 9.まとめ 今回の調査によって、この集合住宅の全体(各種の世帯設備を含めて)の施設がアルカリ骨材反応によって劣化を生じている可能性が高いことが判明した。しかもアルカリ骨材反応の中では比較的反応速度が遅い部類に属する玉髄という微晶質石英が反応物質である点が特徴であって、これは砂岩や粘板岩などの堆積岩中に含まれているケースが多いと言われている。今後は砂岩や粘板岩なども十分にチェックする必要があると思われる。 アルカリ骨材反応が進行しているコンクリート構造物の今後の劣化傾向を予測することは極めて難しい。この集合住宅の建物のように鉄筋コンクリート部材によって構成されている場合、アルカリ骨材反応のみによって強度が急激に現象することはないと考えられているが、有害鉱物が共存している場合の劣化については内外ともに例がなく、今後どのように推移するか予断を許さない。水の供給は建物の外部からのみではなく、内部からも行なわれるので、反応は今後とも継続し劣化は益々加速されると考えられる。 今回の調査を通じて、コンクリート構造物の劣化原因の診断手法の確立が急務であることを痛感した。とくにアルカリ骨材反応に関しては、これによる劣化が我が国において相当に広範囲に進行していると考えられるので、重点的に検討を進める必要があろう。 |
PDFファイル名 | 008-02-0215.pdf |