種別 | 論文 |
主題 | アルカリ骨材膨張による損傷を受けたコンクリート構造物の補修 |
副題 | |
筆頭著者 | 宮川豊章(京都大学工学部) |
連名者1 | 菅島章文(京都大学工学部) |
連名者2 | 小林和夫(京都大学工学部) |
連名者3 | 岡田清(福山大学工学部) |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 9 |
号 | 1 |
先頭ページ | 621 |
末尾ページ | 626 |
年度 | 1987 |
要旨 | 1.はじめに アルカリ骨材反応による損傷を受けたコンクリート構造物は、ひびわれ、変形などの外観的なダメージは顕著であるものも多い。しかし、構造系として考えた場合、耐荷特性に大きな低下は認められないことが通例である。したがって、補修を検討する際には、鉄筋、あるいはPC鋼材の腐食など、ひびわれから浸透する水分が誘発する他の劣化を防止しなければならないことは当然であるが、補修以後のアルカリ骨材膨張の進行を抑制することが主な目的となる。 一般にアルカリ骨材反応による損傷が生じるのは(1)限界量以上の反応性シリカ量(2)十分なアルカリ(3)十分な水分の3者がそろって存在する場合であると考えられている。したがってその膨張損傷を防止するためにはこれらの内いずれかを満足しないようにすればよい。損傷を生じている構造物の補修を行う場合、(1)、(2)のコンクリート中の反応性シリカやアルカリについてはあらたに侵入、増加しないように配慮することは可能であろうが、これらを外部に取り出し滅少させることは極めて困難である。現在の技術では(3)の水分についてのみが制御可能であろうと考えられる。コンクリート中の水分制御法としては、種々の合成樹脂材料によって表面処理を施すのが一般的であるが、膨張抑制効果を期待する場合に要求される性能として次の2側面を考慮する必要がある。すなわち、外部からの水分の供給を速断し、コンクリート中の水分量を膨張を生じる限界量以上にしないという面と、内部からの水分の逸敢を促進させるなどして水分量を限界量以下にするという面の両者である。これまでに、補修方法として表面処理法が検討されてきた例はあるものの、種々の表面処理材料をその置かれる環境条件等との適応性をも考慮にいれて、比較検討した報告はほとんど見られないのが現状である。 5.結論 本研究で得られた主な結論を以下に記す。 1)外部からの水分侵入を防止あるいは内部からの水分逸散によりコンクリートの含水量を制御することによって、アルカリ骨材反応による膨張を制御することが可能である。 2)主として遮水性能に期待する表面処理は、コンクリートが乾燥状態にある場合あるいは外部からコンクリート全面での水分侵入が予想される様な場合にはアルカリ骨材膨張に対する抑制効果を示す。コンクリートの含水率が高い場合には高い遮水性能を有していても内部水分のみで膨張する可能性がある。しかしこの場合にも、進行するひびわれに十分追従し得る高い伸び能力を持った樹脂などを使用する等、遮水性の低下を防げば、ある程度の効果は期待できる。また、部分的な未補修部分から水分浸透の可能性がある場合、コンクリート表面の遮水性が逆効果となる可能性がある。なお、今回用いた仕様の内ではポリブタジエン・ウレタン・ライニングが最も効果的であった。 3)主として発水性能に期待する表面処理は、コンクリートからの水分逸散が期待できるような環境条件であれば、一部の未補修部分から水分の供給があってもアルカリ骨材膨張に対する抑制効果が高い。しかしコンクリート全表面から多量の水分が供給される様な場合では防水性能が遮水系より劣るためその効果は滅少する。なお、今回用いた仕様の内では無機系よりシランの方が効果的であった。 |
PDFファイル名 | 009-01-1110.pdf |