種別 論文
主題 コンクリートのテンションスティフネスを考慮したRC部材の純ねじり解析
副題
筆頭著者 二羽淳一郎(山梨大学工学部)
連名者1 檜貝勇(山梨大学工学部)
連名者2  
連名者3  
連名者4  
連名者5  
キーワード
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先頭ページ 91
末尾ページ 96
年度 1987
要旨 1.序論
ねじりモーメントを受けるRC部材の強度と変形に対する最近の研究は、Hsuら[1]、および岡本ら[2]のように、作用するねじりモーメントをRC部材の周囲に沿って分布する一様なせん断流に置換え、またRC部材を2方向に配筋された板と考えて、軸方向鉄筋および横方向鉄筋の引張力と、斜めに作用するコンクリートの圧縮力により、作用するせん断流に抵抗するとしたものが提案されている。
その際に、斜めに作用する圧縮力を受け持つコンクリートの強度-変形関係は、斜めひびわれの発生のため、強度、剛性ともに低下する、いわゆる軟化挙動を示すと予測し、Hsuはここに、RC板の面内せん断実験より得られたCollinsらの[3]のコンクリートの軟化特性モデルを適用している。
このように、せん断流に対する力の釣合と、コンクリートの軟化特性を結び付けることにより、純ねじりにおいては、Hsuらが、また組合せねじりにおいては、岡本らが、それぞれその終局ねじり耐力を算定する方法を提示し、成果を得ているのである。
しかしながら、これらの方法において問題がないわけではない。例えば図-1にHsuの解析方法による、純ねじりを受けるRCはりのねじりモーメント-ねじれ角関係を示す。図-1より明らかなように、最大ねじりモーメントに対しては、かなり精度良く推定できているのであるが、ねじりモーメント-ねじれ関係に着目すると、斜めひびわれの発生までは、実験データのねじり剛性が高いのに比較して、計算値ではこの傾向を追跡できていない。また、図-2には、作用するねじりモーメントの増加に伴う、コンクリートの軟化係数ηの変化を示した。図中にTS無視として示したものが、Hsuの方法による解析結果である。この解析において用いられているコンクリートの軟化係数ηは、Collinsらの提案による式(2)で計算されるパラメータλの逆数である。

ここに、εlは部材の軸方向平均ひずみ、εtは部材の横方向平均ひずみ、εdはコンクリートの斜め圧縮ひずみ(主ひずみ)であって、εl、εtはいずれも引張を正、εdは圧縮を正としている。Collinsらは、RC板の変形挙動をコンクリート表面で平均的に測定することにより、式(2)のλを得ている。
λの具体的な意味は、図-3に示すように、RC板にεl、εt、εdが一様に作用している状態を考え、モールのひずみ円を考えるとき、モールのひずみ円の直経を主圧縮ひずみで割ったものが、(2)式の√内の第1項であることから、このひずみ円の直径と主圧縮ひずみの比を一つの軟化の尺度としていることか理解できる。つまり、斜めひびわれ幅が拡大すれば、当然εl、εtは増加するが、これによってコンクリートの軟化が進むと考えるわけである。
λの逆数である軟化係数ηは、全く軟化していない場合に1、完全に強度を失えば0となり、本来0≦η≦1の範囲にあるものである。また、上記の仮定から、作用するねじりモーメントが増加して、RC部材の斜めひびわれ幅が拡大するとともに軟化の程度が進んでいくと考えられるので、ηは減少していくはずである。しかしながら、図-2を見るかぎり、ηはそのような傾向を示さず、ねじりモーメントが小さい段階から終局状態に至るまで一貫してほぼ0.4程度の値を示しているのである。
これは、解析において、εlやεtをそれぞれ部材の軸方向、横方向の平均ひずみと見なさず、すべて鉄筋ひずみとしていることに起因するものと考えられる。つまり、ひびわれ間のコンクリートの引張力に対する抵抗、すなわちテンションスティフネスを無視しているために生じた結果と考えられる。
以上の考察に基づき、ひびわれ発生前はコンクリートの引張抵抗を考慮し、ひびわれ発生以後はひびわれ間のコンクリートの引張抵抗を考慮することとした。また、軸方向および横方向の変形は平均ひずみとして取扱うこととした。

8.結論
本解析方法の特徴は、従来から提案されているせん断流理論の考え方に、斜めひびわれ発生前ではコンクリートの引張抵抗、斜めひびわれ発生後では、残存しているコンクリートの引張抵抗を付加したものである。テンションスティフネスのモデルについては、とりあえずCEB-FIPモデルコードの式を用いた。本解析により、得られた結果をまとめると以下の通りである。
(1)ひびわれ発生前の段階におけるねじりモーメント-ねじれ角の関係を精度良く推定することかできた。
(2)斜めひびわれ発生時のねじりモーメントもコンクリートの曲げ強度に対応するひずみを用いて予測したが、これについては多少のバラツキが認められた。
(3)斜めひびわれ発生以後は、テンションスティフネスを考慮した鉄筋応力と平均ひずみの関係式を用いた。これにより、RC部材のねじりモーメント-ねじれ角関係をより現実に近い形で予測することが可能となった。
PDFファイル名 009-01-2016.pdf


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