種別 | 論文 |
主題 | 塩害を受けて補修されたスラブの疲労特性に関する実験的考察 |
副題 | |
筆頭著者 | 市川廣(東京ガス工務部) |
連名者1 | 田淵博(東亜建設工業技術研究所) |
連名者2 | 守分敦郎(東亜建設工業技術研究所) |
連名者3 | |
連名者4 | |
連名者5 | |
キーワード | |
巻 | 9 |
号 | 2 |
先頭ページ | 281 |
末尾ページ | 286 |
年度 | 1987 |
要旨 | 1.はじめに 近年、海洋環境下あるいは海岸地域における鉄筋コンクリート構造物の塩害が大きな問題となってきている。塩害を受けた構造物は、被害が発見された時点において引張鉄筋の腐食による断面減少あるいは孔食によるビットの形成等、構造上大きな弱点を有している。この様な塩害劣化した構造物の補修は、その構造物の要求される耐用年数と残有する耐力との関係を考慮して適切な補修方法を採用する必要がある。しかし、その手法に関してはまだ確立されたものがないのが現状である。 筆者らは、東京湾沿岸にある塩害を受けたコンクリート構造物に対する補修方法に関して、静的載荷試験を湿して種々の検討を加えてきたい[1][2]。本報告は、塩害劣化した鉄筋コンクリートスラブを、ポリマーセメントモルタル系およびエポキシ樹脂系の注入によるプレパクトコンクリートにより補修し、これらの疲労特性に関して実験的に検討を加えその知見について報告するものである。本実験において、劣化スラブの疲労特性は、劣化鉄筋の疲労およびそれを取囲む補修材の疲労に支配される。しかし、それらの疲労に対する相互作用の分離が困難であると予想されたため、実験に先だち、補修材自体の補修効果についての知見を得ることを目的として、梁モデルによる疲労試験を行い検討を加えた。 4.結論 今回実施した疲労試験より次のことが確認された。 (1)本実験に用いられた塩害劣化したスラブは、静的耐荷力に関してはそれほど顕著な劣化は認められなかったにもかかわらず、疲労耐力に関しては非常に小さいことが確認され、塩害を受けた構造物では、疲労耐力の面からの検討が重要であることがわかる。 (2)劣化スラブ供試体中央の上限変位量は、疲労試験初期においては計算値と計測値は比較的良い一致を示したが、疲労破壊直前では計測値は計算値の1.5倍程度となった。梁供試体では試験中に疲労破壊は発生しなかったが、疲労の進展により変位量の増加が見られた。 (3)塩害劣化スラブは疲労破壊が引張側鉄筋の破断により発生しており、劣化部材の疲労耐力向上には引張倒鉄筋の歪振幅を低減する必要がある。本研究で検討対象とした補修材では、引張強度が比較的大きいE.P.C.補修材が引張力の一部を受持つことにより、引張鉄筋の歪振幅を低下させる効果を有することが確認されたが、補修材自体の疲労耐力あるいはひびわれ分散作用等を考慮すると、この効果を補修材に期待する場合はさらに検討が必要であろう。また、物性値がコンクリートに近いP.P.C.補修材ではひび割れ分散性能等は優れているが、引張強度が小さい為補強材等で引張力を分担させることを考慮する必要がある。 今後は、この様な構造物の残存疲労耐力の検討として、鉄筋の劣化に対する定量的評価あるいは劣化鉄筋の破断に対する破壊力学的なアプローチが必要と思われる。 |
PDFファイル名 | 009-01-2048.pdf |