種別 | 委員会報告 |
主題 | コンクリートの破壊力学研究委員会報告 |
副題 | |
筆頭著者 | 三橋博三(東北大学工学部) |
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キーワード | |
巻 | 12 |
号 | 1 |
先頭ページ | 1 |
末尾ページ | 8 |
年度 | 1990 |
要旨 | 委員会設立の背景と活動の概要 コンクリートの引張強度は、圧縮強度に比較してはるかに小さい為に、通常の鉄筋コンクリート構造物の設計では無視され、主として鉄筋コンクリート構造物の耐久性の面からのみコンクリートのひびわれが重視されてきた。しかし、近年の構造解析技術の進歩や終局状態での構造物の安全性評価の必要性が高まってきた中で、ひびわれに基因するコンクリートの非線形挙動の把握が重要な課題となってきた。例えば有限要素法に代表される解析手法の発達は目覚しく、従来は取り入れる事がほとんど不可能であったコンクリートのひびわれや鉄筋とコンクリート間の力の伝達機構など、非線形挙動を生起する種々の要因を組み込んだコンクリート構造物の解析も可能となってきている。ただし、この解析方法の発達に見合った材料挙動のモデル化の開発あるいはそれに見合った材料特性評価試験法の開発がなされなければ、この近代的な数値解析法の持っている威力を十分に発揮させる事はできない。また寸法効果も重要な問題となる。しかしながら、コンクリート構造の力学的挙動に及ぼす影響因子が複雑で多岐にわたる事もあって、とりわけコンクリートのひびわれ特性に関しては、必ずしも上記の目的に有効でかつ合理的なモデルあるいは特性評価法が確立されたとは言えないのが現状である。コンクリートの非線形挙動の多くは、微細なひびわれの発生・累積・連結・成長に基因するが、とりわけ引張り、曲げ、せん断等が作用する場合には、急速なひびわれの伝播によって部材の破壊が生じ、平均的な応力の評価に基づく従来の破壊基準では合理的な解析ができず、ガラスや金属材料の破壊強度推定法として発展してきた破壊力学の手法をコンクリートに応用することの可能性が世界的に注目されている。このように急速に発展しつつある研究の情報を収集・整理して我が国の研究者及び技術者に伝えると共に、新たな試験法の開発やコンクリート工学への破壊力学の応用の検討などを組織的に行なう事を目的として、1988年5月にコンクリートの破壊力学研究委員会が日本コンクリート工学協会内に設けられ、1990年3月末をもって終了した。コンクリートの破壊力学研究委員会では、2年間にわたるその委員会活動の成果をまとめ、主としてひびわれ特性の評価やモデル化について述べた基礎編と部材解析や設計あるいは材料性能の評価に破壊力学をいかに用い得るかを示した応用編から構成された委員会報告書をとりまとめた。更に、2年間の活動の総まとめとして1990年3月末にコロキウムを開催し、広く会員からの論文を募り、委員会報告と研究発表を交えた意見交換の場を設けた。また、大韓民国から、国際的に活躍している二人の研究者を招き、最近の成果を発表して頂いた。コロキウムでは5つのセッションで13編の論文発表と7つの委員会報告がなされ、約200名の参加者があった。尚、上述の委員会報告書はコロキウム論文集と合わせて一冊にまとめられている。以下に、当委員会でまとめた委員会報告書の概要を紹介するが、詳細は文献を参照されたい。 今後の展望 コンクリートの破壊力学は極めて新しい、発展途上の学問である。当研究委員会の2年間の活動では、問題を掘り起した段階で終っており、今後の研究に期待するところが大きい。とりわけ、破壊進展領域の実態解明とその力学的挙動のモデル化との関係解明;より合理的な引張軟化曲線評価法の開発;種々の非線形挙動の解析の積み重ねと、それに基づく構造設計や設計規準の合理化の検討;材料の損傷劣化と破壊力学パラメータとの関係に関する研究と既存構造物の健全度評価への応用技術の関発などが望まれる。 |
PDFファイル名 | 012-03-0001.pdf |