種別 論文
主題 逆解析手法によるマスコンクリートの熱特性値の推定
副題
筆頭著者 松井邦人(東京電機大学)
連名者1 西田徳行(西松建設)
連名者2 土橋吉輝(西松建設)
連名者3 潮田和司(西松建設)
連名者4
連名者5
キーワード
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先頭ページ 1347
末尾ページ 1352
年度 1994
要旨 1.はじめに
 セメントの水和反応によりマスコンクリート躯体内で温度が上昇し、その後降下する。この時躯体内に発生する非線形温度分布と、岩盤等の周辺との拘束により躯体にひび割れが起こる。このため、マスコンクリートの温度変化を予測することがしばしば行われてきた。このような予測は、室内実験で予め測定して求めた値かあるいは示方書の値を参考にして熱特性値を定め、コンクリート躯体が均質で等方的な熱特性を有するものと仮定して伝熱方程式を解いて温度変化を予測している。また、これらの特性値の妥当性を確認するため、マスコンクリートの現場測定も行われてきている。しかし、現場測定データから効率的に熱特性を推定する方法は必ずしも確立していない。
このように、測定データからモデルのパラメータを推定することを逆解析と呼んでいる。近久等は、シンプレックス法を用いて熱伝達係数を推定している。また、Murakamiと星谷等は拡張カルマンフィルタを、松井等はガウス・ニュートン法を用いた構造パラメータの推定法を提案している。しかし、逆解析は本質的に不安定性が内在し、1)対象とする問題の特性、2)対象のモデル化、3)測点数とそれ等の位置、4)測定データの質、5)逆解析アルゴリズム等の影響を受ける。そこで、本研究では現場測定を想定して数値シミュレーションにより、前述の1)と5)および3)の測点数について検討する。まずコンクリート躯体内温度を解析的に求め、それを測定データと見なし、Gauss−Newton法を用いてコンクリートの熱伝導率、熱容量、熱伝達率、発熱特性パラメータQ、γの5個の熱特性のパラメータを推定している。熱特性推定問題が不安定性の顕著な問題であるかどうか、Gauss−Newton法で安定して熱特性を推定することができるかどうかを確認した。
5.結論
 コンクリート躯体内の温度が測定されていることを想定して、Gauss−Newton法を用いてその躯体の熱伝導率Kc、熱容量ρcCc、熱伝達率αA、発熱特性Q、γの5個の熱特性パラメータを推定する逆解析アルゴリズムを開発した。あらかじめ、熱特性パラメータの値を仮定して非定常温度解析を行い、この解析温度を測定温度の代わりに用い、温度解析に用いた5個のパラメータを未知として、この逆解析アルゴリズムで未知パラメータを推定している。以上の結果から次のような結論を得た。
1)Gauss−Newton法に基づく逆解析は、熱特性パラメータの推定に有効である。
2)検討した範囲では、初期値の選択の如何にかかわらず、安定した収束性がある。
3)熱特性パラメータは、既知として与えた岩盤の熱伝導率、熱容量、固定温度の値が正しい値と少し異なったものでも、その影響は比較的小さい。
 実測データでは外気温やコンクリート躯体の測定温度にも誤差が混入している。また、躯体の温度特性に関する均質性・等質性の仮定も、実構造を単純化したモデルであり、これらの影響を受け、シミュレーションほど良い結果は期待できない。しかし熱特性値推定問題は、他の逆問題と比較して良好な性質があると判断できる。安定した収束性から、少なくとも深さ方向に3点(上から5cm、中央部、下から5cm)で温度変化が測定できれば、本アルゴリズムで効率的に逆解析が可能である。温度測定の精度に注意すれば、実測データヘの適用も十分に期待できる。
PDFファイル名 016-01-1226.pdf


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